『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

プロジェクトにおけるワークショップ

先日、千里ニュータウン内で開催されたワークショップ(WS)にお手伝いとして参加させていただきました。WSをされている方は日々実感されていることかもしれませんが、先日ワークショップに参加して、プロジェクトにおけるWSの位置付けや難しさ、考慮する点として次のようなことを感じました。

○WSに参加するのは住民の一部
先日のWSに参加したのは20数人ですが、これは地域全体を見れば一握りということになります。WSにぜひ参加して欲しいと思う人には事前に声かけをするなどの配慮は必要ですが、いずれにしても、何千人もの人が集まるWSというのは現実的には不可能。WSで出てきた意見は、一部の住民から出された意見だということは忘れてはいけない点です。

○参加者は毎回参加するわけではない
先日は2回目のWSでしたが、この日、初めて参加した方もいました。WSを連続して計画する場合、1回目のWSではこの内容、2回目のWSでは1回目の議論をふまえた内容を、3回目のWSでは・・・ と、徐々に内容を進展させるように計画したいですが、参加者は必ずしも連続して参加するわけではありません。そのため、これまでの経緯の振り返りの時間をもうける必要がありますが、振り返りだけでは、前回参加した人からは同じことをやっているという意見も出てきます。振り返りの時間をどの程度もうけるか、そのバランスが難しいと感じました。

○WSの結果を地域に還元する
WSに参加するのは住民の一部であり、毎回参加する人だけでないとしても、WSで出された意見は貴重なもの。そうして出てきた意見が、「一部の人だけで出した意見でしょ?」というふうに見られてはもったいない。WSを開催することは告知しているのだから、出席しないのが悪いのだと単純には言い切れません。そのために、WSの後に、地域にどうやって還元するかを考慮せねばなりません。
なお、先日のWSでは、WSで出た意見をアンケート形式にして全住民に配布する、町内の各自治会に投げかけて議論してもらうという意見が出されました。

○次の具体的な行動へ
「WSで意見を出したけど、意見を出しっぱなしで終わってしまった。結局、何も変わってない」というのは、参加者からしばしば出てくる声だと思います。そのため、WSの後に、小さなことでも具体的に動き出すための糸口を見つける必要が出てきます。先日のWSでは、繰り返しになりますがWSで出た意見をアンケート形式にして全住民に配布する、町内の各自治会に投げかけて議論してもらうという次のステップが見えました。
WSでは出された意見をきれいにまとめるだけで終わらず、このWSを受けて、次、具体的にどう動くのか? を見つけること。たとえそれが小さなことであっても、具体的な動きにつなげることが大切だと感じます。

ここで書いたことは、千里ニュータウンでのWSだけに限らず、「居場所ハウス」で行われたWSでも同じことだと考えています。

「居場所ハウス」がオープンするまでに、何度かWSが開催されました。プロジェクトの初期の段階では関わっていなかったため、人から話を聞いたり、残された記録を読んだりするしかないのですが、「居場所ハウス」のWSでは建物をどうするか? どういう飲食メニューを出すか? などに加えて、自分が「居場所ハウス」に対して何ができるか? を出し合うWSも開催されました。
記録を見ると、このWSではお茶碗を洗う、郷土料理を作れる、大工仕事ができる、草取りができる、子どもと遊ぶのが得意、お茶を教えることができる、英語が得意… などの意見が出されています。ただし、WSで出された意見をコーディネートする作業が不十分だったこともあり、WSで出された意見が「居場所ハウス」の運営に直接つながったとは言えないのは事実です。
しかし、このWSによって、これが欲しい、あれが欲しいと要望するのではなく、自分に何ができるかと頭を切り替えて発送することになります。また、「WSの時、○○さんがこんなことができると言っていた」というように、参加した人にとっては地域の人の新たな一面、地域の人材を発見する機会にもなります。例えば、「居場所ハウス」ではWSでお茶を教えることができるという意見を出した方に声をかけ、一度、お茶の教室を開催したこともあります。WSが「居場所ハウス」の運営にダイレクトにつながったわけではありませんが、長い目で見れば、要望するだけ、人任せにするだけでなく、自分たちにできることを通して運営していく場所を作っていくための土壌作りになったと言えるかもしれませんし、せっかく開催したWSを今後も土壌作りにつなげていかねばならないと考えています。

なお、ワークショップという言い方が難しいという声も聞きます。WSというと何をするのかわからない、難しそうな印象をもたれてしまうということであれば、WSに代わって、その地域の状況に対応したよりふさわしい表現を見つけることも大切なのかもしれません。