先日、ある方と話をする機会があり、何故「まちの居場所」に注目するようになったのかを改めて考えていました。
「まちの居場所」（コミュニティ・カフェ、まちの縁側、ふれあいの居場所、常設側居場所と呼ぶ人もいます）は、2000年頃から各地で開かれるようになってきました。このような「まちの居場所」に注目するようになったきっかけの1つは「ひがしまち街角広場」との出会いです。
「ひがしまち街角広場」は千里ニュータウンの近隣センターの空き店舗を活用して生まれた場所。ふらっと気軽に立ち寄ってお茶が飲める、そこに行けば地域の人と顔を合わせることができる、学校帰りの子どもたちが水を飲みに立ち寄る、地域における様々な活動の拠点になっている。しかも、このような場所が、専門家ではなく地域で暮らす人々（主婦を中心とする人々）によって運営され続けていることには驚かされました。2001年9月30日にオープンした「ひがしまち街角広場」も、途中で場所の移転や代表者の交代はありましたが、もうすぐオープンから15年になります。
近代というのは、様々なものが混じり合った暮らしを機能によって分化させ、それを単一の機能をもつ施設、制度として整えてきたと言ってよいと思います。
そして、千里ニュータウンとは、こうやって機能分化した施設、制度を組み合わせることによって計画された町だと言えます。各種店舗、学校、病院、集会所などの各種施設が整えられ、住宅地からはごちゃごちゃしたものが排除され、閑静で緑豊かなものになった。けれども、そういう町には地域の人々がふらっと立ち寄ったり、互いに顔を合わせたりする場所がなかった。だから、地域の人々は自分たちで「ひがしまち街角広場」という場所を運営し続けてこられたのだと思います。
単一の機能をもつ施設、制度の組合せでは暮らしというものは成立しない。このことが、「ひがしまち街角広場」から教えられた最も大きなことです。
先日、話をしていた方が「街角のヒーロー」が活躍するのが大切だという話をされました。
「街角のヒーロー」という発言を聞いて、ヒーローがいることは大切だけれど、もっと大切なのは「街角」が存在していることではないかと感じました。そして、2010年に日本建築学会の環境行動研究小委員会から『まちの居場所』という本を出しましたが、当初、「ひがしまち街角広場」のような場所のことを「まちの居場所」ではなく「街角の居場所」と呼んでいたことを思い出しました。
「まち（町）」と「街角」は何が違うのかと考えると、（主観的だと思いますが）「まち」というのはある範囲の中にある建物や公園と、そこにいる人々を上から眺めているイメージ。それに対して「街角」はもう少し範囲が狭く、立ち話をしている人、物を売る人・買う人、座って道行く人々を眺めている人、足早に通り過ぎて行くだけの人がいたり… というような場面が浮かび上がってくるような感じがします。「まち」よりも「街角」の方が人に焦点があたっており、人と人とが様々なかたちで関わりをもてる場所を「街角」と言ってよいのかもしれません。
このような場面を表現するのに「思い思い」、「居合わせる」、「行き交う」、「たたずむ」などの言葉がぴったりではないかと。実はこれは鈴木毅氏が提唱する「居方」の種類。先日話をしながら、「居方」とは「街角」を捉えるためのボキャブラリーにもなっているのではないかと考えていました。
人と人とが様々なかたちで関わりをもてる場所を「街角」と考えると、千里ニュータウン計画においては「まち」は作れたけれど、「街角」を生み出すことはできなかったと言えるのではないか。
だからこそ地域の人々は自分たちで「ひがしまち街角広場」を運営することで、「街角」を生み出してきたのだと思います。
「街角のヒーロー」が活躍できるという発言に戻ると、ひょっとしたらそれぞれの地域にはヒーロー（になれる可能性がある人）はいるのかもしれません。足りないのはそういう人たちが活躍するための「街角」ではないか？ 「まちづくり」ではなく「街角づくり」が重要ではないか？
ここで問題になるのが「街角」は意図的に作れるものなのか？ ということですが、この点についてはまさに「ひがしまち街角広場」が示している通りです。大船渡の「居場所ハウス」でも、「街角」だなと感じる光景が生み出されていると感じます。
居場所が「街角」を生み出すこと、同時に、「街角」に居場所があること。「まちの居場所」にはこれを実現できる可能性があると思います。「まちの居場所」ではなく、改めて「街角の居場所」という表現を用いる必要があるのかもしれません。
