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デジタル公民館まっさきについて:震災後に生まれた活動を地域が引き受けること

2016年12月11日(日)、末崎地区公民館「ふるさとセンター」にて、「デジタル公民館まっさき」のこれからを話し合う集まりが開かれました。
東日本大震災から5年半、霞ヶ関ナレッジスクエア(KK2)の支援・協力により行われてきた「デジタル公民館まっさき」の活動も今年度で一区切りとなるとのこと。

なぜ、霞ヶ関ナレッジスクエアが末崎町での活動を続けてきたかについて、次のような話を伺いました。
現在はIT抜きに生きることのできない時代であり、国も「IT立国」を掲げて光ファイバー網などハードのインフラ整備を進めている。しかし、東日本大震災直後の「ふるさとセンター」には電話回線1本とFaxしかなかった。大船渡市の復興計画は全てウェブサイト上に掲載されているのに、末崎町内の拠点となる公共施設でインターネットが使えないという状況では、どうやって復興の情報を手に入れるのだろうと思ったとのことです。
加えて、光ファイバー網などのインフラが整備されたとしても、それを日々の生活で上手く活用しているか否かは地域間格差がある。都会にいれば、パソコン、インターネットでわからないことがあれば周りにいる若い部下に聞けるという環境にあるが、末崎にはそのような人がなかなか見つからないこと。
こうした経緯でスタートした「デジタル公民館まっさき」は今年度で一区切りとなりますが、霞ヶ関ナレッジスクエアの方からは、末崎町から要請があれば今後も協力していくことも可能だという話がありました。

この日の集まりでは、①「パソコンよろず相談」として行われてきたパソコン、インターネットについての困りごとを解決したり、技術を習得したりする活動、②竹トンボ作り、ミニ門松作りや、熊野神社式年大祭の取材、碁石民俗誌など、末崎町民と東京から来たメンバーが一緒に楽しんだり、末崎町の価値を共有してきた活動の2つについて、次のような話が行われました。


①の活動について:
これからも「パソコンよろず相談」を継続してもらいたいのが本音だが、従来通りの活動が継続ができないとすれば、パソコン、インターネットを身につけた町民で緩やかなグループを作って、活動を継続するのはどうか。「パソコンよろず相談」のようなマンツーマンでの指導は難しいかもしれないが、メンバー同士が互いに教え合い、学び会うことはできる。そうやって町内で少しずつ輪を広げていきたい。
本当に解決できないことがあれば、テレビ会議のシステムやFacebookなどを通して東京の方にも相談できる。また、町民によるグループは、協力を要請するための受け皿としての役割も果たすことができるという話がされました。
パソコンやインターネットはあくまでも道具だという意見に関しては、町民がこの道具を使って何をしたいかを考える必要があるという意見も。
なお、霞ヶ関ナレッジスクエアの方々が東京に向けて出発された後、残っていた何人かで話が行われ、年明けに意見交換のための自主的な集まりを開こうという話がされていました。

②の活動について:
「どこ竹inまっさき」のメンバーから、「ふるさとセンター」で行っているミニ門松づくり(今年はこの日の朝に開催され、好評だったとのことです)、「居場所ハウス」で行っている夏休み物づくり教室は定着しつつある。いずれも子どもから高齢の方までの参加があり、多世代が参加する場として必要とされていると思うので、来年度以降も継続したいという話がありました。


こうした話を伺い、「デジタル公民館まっさき」の活動(を通して生み出されたもの)を町民で継続していこうという雰囲気ができていることを感じました。

東日本大震災の後、(地域外から提案されたものも含めて)新たに立ち上げられた活動を、地域の人々がどうやって受け継いでいけるか? その活動を通して築かれた地域を越えた関係をどうやって継続していけるか?
「デジタル公民館まっさき」に限らず、他の活動にも当てはまることだと思います。これは、地域が復興していく上で乗り越えるべきテーマだと言ってよいのかもしれません。

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