『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

サンフランシスコにおける非営利組織による都市緑化の試み@街路樹とサイドウォーク・ガーデン

街路樹(ストリート・ツリー)

サンフランシスコを歩いていると、写真のように小さな街路樹をあちこちで見かけます。これらの街路樹(ストリート・ツリー/Street Tree)にはFriends of the Urban Forestと書かれたプレートが取り付けられています。

調べたところ、次のようなことがわかりました。
Friends of the Urban Forestはサンフランシスコのプレシディオ(Presidio)に拠点を置く非営利組織。サンフランシスコでの理想的な都市森林(Urban Forest)の実現に向けて、植樹と手入れのために近隣の人々が集うことをミッションに掲げて活動しており、1981年以来、サンフランシスコに6万本以上の街路樹を植樹。これはサンフランシスコの街路樹の林冠(Canopy)のおよそ半分を占めるとのことです*1)。
通りで見かけた街路樹は、Friends of the Urban Forestが「コミュニティ植樹プログラム」(community tree planting program)として近隣に無償で提供され、植樹されているもので、ウェブサイトには「コミュニティ植樹プログラム」が次のように紹介されています*2)。

  • 街路樹は無償で提供されます(コンクリートの除去を含む)
  • 市が承認したリストから街路樹を選択できます
  • このプロセスに参加できます:植樹し、隣人と協力することで、近隣の将来の景観と雰囲気を決定してください
  • StreetTreeSFが、街路樹の剪定と、樹木に関連する歩道の損傷の修復に責任を持ちます*3)

サンフランシスコではほとんど雨が降りません。人間にとっては「良い天気」ということになりますが、植物にとってはそうではない。ストリート・ツリーの根本には、「treegator」という水の蒸発を防ぐための覆いが取り付けられているのも見かけました。

サイドウォーク・ガーデン

サンフランシスコでは、写真のような歩道に作られた花壇も見かけます。歩道の舗装を剥がし、花壇にしたもので、サイドウォーク・ガーデン(Sidewalk Garden)と呼ばれています。サイドウォーク・ガーデンの中には、上で紹介した街路樹の周りに設置されているところもあります。

サイドウォーク・ガーデンも非営利組織のFriends of the Urban Forestのコーディネートにより行われているもので、街路樹の植樹と同様、近隣の住民とボランティアの参加により設置されます。ただし、街路樹の植樹に比べるとカバーする範囲は小さいため(たいていは1ブロック)、作業は3日間で行われ、3日目の土曜日に植付けとぽトラック(持ち寄り)の昼食会で終わるとされています*4)。

サイドウォーク・ガーデンの設置にあたって、Friends of the Urban Forestは次のような役割を担うとされています*5)。

  • ブロック全体のサイドウォーク・ガーデンの費用の大部分を補助するための資金を確保する
  • 歩道を確認し、市の要件と埋設された管に基づき、最適なサイドウォーク・ガーデンの場所を決定する

  • 歩道の景観許可証の図面の作成と、Public Works(公共事業部)との連絡役として、検査官に会い各サイドウォーク・ガーデンをレビューし、各物件(Property)に歩道の景観許可があることを確認する
  • 材料や植物の選択を含め、各サイドウォーク・ガーデンを設計する
  • コンクリートの除去、舗装の施設、及び、土壌改良剤、マルチ、植物、樹木を含む資材の配送を調整する
  • サイドウォーク・ガーデンの設置作業日を監督し、全てのサイドウォーク・ガーデンが許可証の図面に基づいていることを確認する

サイドウォーク・ガーデンにはカリフォルニア原産、及び、干ばつ耐性植物が植付けられます。このようにして設置されるサイドウォーク・ガーデンには、住宅などの物件(Property)のオーナーが水やりなどの世話を行います。
ただし、知人に聞いた話では、水やりなどの手間が発生するため、特に物件(Property)が賃貸されている場合には、サイドウォーク・ガーデン設置に意見がまとまらないこともあるということです。

サイドウォーク・ガーデンの中には、犬の排尿によるマーキングや、立ち入り、ゴミのポイ捨てなどを防ぐため周囲に柵が取り付けられている場所もあります。また、犬の排尿禁止のプレートを設置している場所もあります。

都市緑化のメリット

Friends of the Urban Forestは、このように街路樹(ストリート・ツリー)の植樹、サイドウォーク・ガーデンの設置を進めていますが、次のような都市緑化のメリットが、根拠となる資料とともに挙げられています*6)。

  • 街路樹は物件(Property)の価値を上昇させる
  • 街路樹は酸素を生成し、空気を浄化し、地球温暖化を抑制する
  • 街路樹とサイドウォーク・ガーデンは洪水と水異質汚染を抑制する
  • 街路樹は、車のスピードを抑制し、追突事故の頻度と重大度を抑制することで、交通を穏やかなものにする
  • 街路樹とサイドウォーク・ガーデンは商店街の収益を増加させる
  • 街路樹とサイドウォーク・ガーデンは犯罪を減らすかもしれない

これらに加えて、その他のメリットとして次のような点も挙げられています。

  • 街路樹はバスの待ち時間を短くする。 より成長した街路樹が存在するほど、バスの待ち時間が短くなる
  • 街路樹とサイドウォーク・ガーデンは、車道と歩道の間に物理的および心理的なバリアを作り、歩行者、子ども、及び、ペットを危険から守る
  • 街路樹とサイドウォーク・ガーデンは、鳥や昆虫の自然の生息地を提供する
  • 街路樹は交通騒音を吸収し、プライバシーを向上させる
  • 街路樹と歩道の庭は、近隣と市民のプライドを醸成する
  • 近隣の植樹イベントはコミュニティを強化し、近隣の人々を結び付ける

最後に、Friends of the Urban Forestと協働するメリットとして次のように記載されています。

「30年以上の経験のある私たちは、サンフランシスコの全ての地区において、街路樹とサイドウォーク・ガーデンの選択、植樹、手入れの専門家です。敷地の検査から植物種の選択、植付け、フォローアップケアまでの、プロセスの全ステップを管理します。
私たちのグループ植樹イベントは、隣人を1つにまとめることを通してブロックを変化させます。」*7)


参考

  • 1)Friends of the Urban Forestの「About Us」のページより。
  • 2)Friends of the Urban Forestの「Free trees for San Francisco」のページより。
  • 3)StreetTreeSFは、San Francisco Public Works(公共事業部)が管理する有権者が承認したイニシアチブ(voter-approved initiative)で、サンフランシスコ市内の全ての地域の12万4千本以上の街路樹を専門的に維持・管理している。San Francisco Public Works「StreetTreeSF」のページより。
  • 4)Friends of the Urban Forestの「Sidewalk Landscaping」のページより。
  • 5)Friends of the Urban Forestの「Sidewalk Landscaping」のページより。
  • 6)Friends of the Urban Forestの「Benefits of Urban Greening」のページより。
  • 7)Friends of the Urban Forestの「Benefits of Urban Greening」のページより。