POPOSとは
サンフランシスコには魅力的な広場・公園がたくさんありますが、ダウンタウンのオフィスがあるエリアを中心にPOPOSと呼ばれる屋内・屋外の広場も多数あり、都市の中の非常に心地よい場所を実現しています。
POPOSは「Privately Owned Public Open Space」の頭文字をとったもので、民間が所有する土地ですが、法的にパブリックな場所として公開することが要求される空間で、民有のパブリック・オープンスペースという意味*1)。
POPOSは屋外の広場だけでなく、建物の屋上、屋内など多様なタイプがあります。いずれも無料で利用できますが、利用可能な時間が限られている場所もあります。ほとんどの場所は受付不要で自由に利用できますが、建物の屋上にある場合は受付で名前を記入したり、写真付きのID(パスポート等)を提示する必要がある場所もありました。特に魅力的だと感じたPOPOSはこちらで紹介しています。
サンフランシスコ市の計画局のページによると、1985年以前は、ディベロッパーがPOPOSを設置した理由として、自発的なもの、容積率のボーナスとの引き換え、建築を承認してもらうための3つがあったとされています。
1985年に策定されたダウンタウン・プランにおいて、C-3地区のプロジェクトの一部として、パブリック・オープンスペースのための体系的な要件が初めて作成。その目的は、ダウンタウンの労働者、居住者、訪問者のニーズに対応できる十分な量と種類の、質の高いオープンスペースを提供することでした。
1985年のダウンタウン・プランでは「1%のアート・プログラム」(1% Art Program)も策定されています。新築するプロジェクト、ダウンタウンと近隣地区における25,000平方フィート(約2,300㎡)以上を増築するプロジェクトにおいては、総工費の少なくとも1%をパブリックアートに充てなければならないというもの。2013年にはこの適用が、新築のプロジェクト、15地区における25,000平方フィート(約2,300㎡)以上を増築するプロジェクトを含む全ての住宅でないプロジェクトに(non-residential projects)に拡張されています*2)。
POPOSのサイン
サンフランシスコには多くのPOPOSがありますが、統一されたサインがあるため、POPOSであることがすぐわかるようになっています。
POPOSはダウンタウンの労働者、居住者、訪問者に大きな価値を提供していますが、もしそこがPOPOSと容易に認識されなければ、もしそこにアクセスできなければ、その価値は失われてしまう。こうした考えで、サンフランシスコ市は2012年にPOPOSのサインを統制するための法律を策定。新しいロゴが作られ、標識のサイズ、デザイン、記載する内容が取り決められました*3)。
POPOSの標識は写真のような銀色のもので(一部、色が違う標識もある)、ロゴとともに名称、利用可能な時間帯、座席数、食事が販売されているか、トイレの有無、車椅子でのアクセスの可否(ADA=Americans with Disabilities Act :障害を持つアメリカ人法)という情報が記載。入口などわかりやすい場所に掲示されています。
POPOSのデータ
DataSFのウェブサイトでは、POPOSに関するデータが公開されています。このデータをもとに、POPOSの概要をみていきたいと思います。
2018年10月24日現在、サンフランシスコには78のPOPOSがあります。最も古いPOPOSは1959年に開設。最も新しいPOPOSは、2016年に開設されたLinkedin本社ビルのロビーです(下の写真)。
上に書いた通り、1985年策定のダウンタウン・プラン前後でPOPOSの作られ方は変わっています。78のPOPOSのうち、1984年までに開設されたのが38ヵ所、1985年以降に開設されたのが30ヵ所となっています(10ヵ所は不明)。
利用可能な時間帯は、常時利用できるのが47ヵ所、業務時間内のみ利用できるのが30ヵ所。座席があると記載されているのが41ヵ所と、半数以上のPOPOSには座席が用意されています。
POPOS内にアートが設置されているのは25所。POPOS内で飲食物が販売されているのが30ヵ所。ここでいう飲食物の販売とは、あくまでもPOPOS内での飲食物の販売です。POPOS内で飲食物が販売されていなくても、訪問した全てのPOPOSでは飲食物を持ち込むことが可能になっており、実際に持ち込んだ物を食べたり、飲んだりしている人を頻繁に見かけました。
このようにPOPOSはサンフランシスコのダウンタウンにおいて座れる場所、飲食できる場所、アートに触れる場所になっています。
注
- *1)「POPS」(Privately owned public space)と呼ばれることもあり、オークランド、ニューヨーク、シアトル、ソウル、トロントを始め世界中の多くの都市にある(Wikipedia「Privately owned public space」のページより)。
- *2)Planning Department「Privately-Owned Public Open Space and Public Art (POPOS)」のページより。
- *3)Planning Department「Privately-Owned Public Open Space and Public Art (POPOS)」のページより。