『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

「居場所ハウス」、オープンから8ヶ月

「居場所ハウス」は、2013年6月13日のオープンから、およそ8ヶ月が経過しました。最近の「居場所ハウス」の様子を整理しました。

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1)自然な見守り

近くに住む90代、80代の女性が毎日のように訪れる。帰りにはスタッフや、居合わせた来訪者が、家まで一緒に歩いて見送りにいくこともある。
2人の女性は毎日のようにやって来るため、姿を見ない日が続くと逆に心配になるなど、自然なかたちでの見守りができている。

2)いつもの人が迎えてくれる(パートでの運営)

当初からボランティアで運営するのが理想だという話があり、ボランティアのみで運営していた時期もあるが、十分な人数のボランティアが集まらず、結果として少数の人への負担がかかっていた。
そこでパートを募集することとし、1月中旬から3人の女性に月曜・火曜・金曜の3日間、パートで運営をお願いすることとなった。パートによる運営が始まってから、来訪者数も増え、雰囲気が良くなったという意見も出ている。5歳の子ども、小学生、高校生から、90代の方までと、4世代にわたる年代の方が思い思いに過ごしている様子を見ながら、「今日はいい感じだね」、「これが本来の「居場所」、多世代交流っていう感じだなぁ。四世代だよ」という言葉もかわされていた。
昨年の夏も1人の女性にパートをお願いしていたが、1人だと相談相手もおらず、急な用事があった時にも対応しにくいという状況であった。現在は、3人の女性が、2人ずつペアで担当していただいている。
なお、「居場所ハウス」には立ち上げの時から中心的に関わっているコアメンバーがいる。3人のパートの方に運営を任せるにしても、任せっきりにするのでなく、コアメンバーがサポートしていくことが必要である。毎週日曜はこれまで通り、コアメンバーが交替で、ボランティアで運営を行うこととしている。

3)最低限のルール・マニュアル

「居場所ハウス」のような場所においては、過度なルール・マニュアルをもうけると、それに縛られることで堅苦しい雰囲気になってしまうことが危惧される。
「居場所ハウス」では、当初、イベントや団体での利用方法が明確でなかったため、イベントの実施が共有されていなかったり、突然大勢の見学者がやって来たりすることもあり、混乱が生じていた。そこで、6月のオープンからしばらく経過した後、申込書を作成。イベントや団体で利用する際には、申込書に記入し、利用の申請をしてもらうこととした。このスタイルも、今ではほぼ浸透している。
また、1月中旬に3人のパートをお願いするに際して、暖房の点火・消火、戸締りなどスタッフが行う業務リストを作成した。
多数の人が運営に携わるため、こうしたルールやマニュアルは不可欠だが、ルールやマニュアルに縛られ過ぎないために、最低限どのようなルールやマニュアルを作成すべきかは、引き続き検討する必要がある。

4)土曜日の昼食会

毎週土曜日は、近くにある「サポートセンター・おたすけ」で開催されている「おたすけクラブ」に参加するメンバー有志が昼食会を行っている。そして、居合わせた来訪者にも昼食を振る舞ってくださっている。
当初、団体利用の手続きや食材の購入方法について考えの食い違いが見られた。そこで、12月に話し合いを行い、この話し合いで「サポートセンター・おたすけ」とは無関係の、有志によるボランティアとして活動していること、昼食会は当番をしている自分たちがお昼を食べるためという位置づけであり、外部の人に宣伝し昼食を振る舞うことは望んでいないことが確認された。そして、「居場所ハウス」としては、昼食を作る際の食材の購入費のサポートを行うことも確認された。

5)郷土料理の継承

1月17日(金)に、地域の方が郷土食のかぼちゃ粥を作り、みなに振る舞ってくださった。かぼちゃ粥を初めて食べた人もおり、「居場所ハウス」で居合わせた人の会話から自然発生的に生まれた郷土料理の継承だと言ってよい。また、「おら、初めて食べた。子どもの頃、出されたけど、ドロドロして見かけが悪かったから嫌だと言って」という貴重な思い出話を聞かせていただくこともできた。
今後も、負担をかけずに、義務としてでなく楽しんで郷土料理を作っていただくために、自然発生的に生まれた活動をサポートするというかたちが好ましい。具体的には、土曜日の昼食会と同じく、食材の購入費をサポートすることが考えられる。

6)徐々に場所を作りあげていく

「運営が始まれば必要なものが色々と出てくるだろうから」ということで、「居場所ハウス」では米ハネウェル社からいただいた基金をオープニングまでに使い切るのではなく、一部を運営協力金として確保していただいた。
実際に運営が始まると、必要なものが色々と出てきたため、メンバーと相談しながら運営協力金で必要な物を揃えていった。どのような備品が必要なのかを意見交換するのも、メンバー間のよいコミュニケーションになった。
また、運営協力金では、手作りで場所を作っていけるような材料を買って欲しいという意図もあったため、木材を購入。現役時代、建築関係の仕事についていた地元の方が、本棚や倉庫などを作ってくださった。

7)運営の継続性

今後の運営を考える時、補助金に頼って運営していくか、自分たちで運営費をまかなうための核となる事業を行うかという選択肢がある。メンバーの間では、大きな備品を買ったりイベントをしたりする時には補助金を使うにしても、日常のランニングコストまで補助金に頼るのは好ましくないということで意見が一致している。その具体的な方法を見つけていくことが、今後の大きな課題となる。

ここに書いた通り、課題は色々とありますが、オープンから8ヶ月。「居場所ハウス」は少しずつよい雰囲気になっています。