9月の第1月曜日、アメリカはレイバー・デー(労働の日・Labor Day)の祝日です。ニューディール政策によって作られたワシントンDC郊外のグリーンベルト(Greenbelt)では、この週末、レイバー・デイ・フェスティバルが行われます。
グリーンベルトでは年間に様々な行事が行われていますが、レイバー・デイ・フェスティバルは、その中で大きな行事の1つ。今年2011年で57回目を迎えました。フェスティバルのハイライトはパレードです。
目次
ニューディール政策によるパブリックアート
グリーンベルトの50周年記念行事を紹介した時、まちびらき50周年の年(1987年)レイバー・デイ・フェスティバルについて次のような紹介をしました。
1987年9月のLabor Day(労働の日・9月の第1日曜日)のフェスティバルにおけるパレードでは、グリーンベルト50周年とアメリカ合衆国憲法200周年を祝う山車(Float)が登場。山車には、彫刻家Lenore Thomasによるセンター・スクール(現在のコミュニティ・センター)のレリーフ「我々人民(We the People)」のレプリカがあしらわれ、「我々人民は、グリーンベルトとアメリカを偉大にする!(We the People…make Greenbelt and America Great!)」を宣言した。最初の市民(Pioneer citizen)の代表として、50年間グリーンベルトに住み続けているBarcus家の、三世代の人々が山車に乗車した。
写真は、グリーンベルトのコミュニティ・センター。アール・デコ(Art Deco)様式の奇麗な建築です。この扉部分には彫刻が施されています。
50周年記念のパレードで登場した「We the People(我々人民)」の山車は、この写真の扉の上にある彫刻「We the People」を模したもの。
ニュー・ディール政策のもとでは、公共事業促進局(WPA:Works Progress Administration、後に Work Projects Administration と改称)により、職を失ったアーティストへ仕事場を提供するという事業も行われました。グリーンベルトのコミュニティ・センターの彫刻も、この事業の一環として制作されたものです。
WikipediaにはWPAによる連邦美術計画(FPA=Federal Art Project)の成果が次のように書かれています。
この計画によりアメリカの街角に「パブリックアート」と呼ばれる、記念碑とも違う、町を装飾し生活に彩りを与え、さまざまな思索を誘うための彫刻群が多く建つようになった。この成果は、戦後、新築ビルに建築費の1パーセントをパブリックアートに使うよう義務付ける条例などにつながってゆく。 また多くの市民がポスターや絵画、彫刻、美術教育活動を通じて同時代の美術に大量に触れる豊かな経験をしたため、美術鑑賞の一般化や産業デザインの洗練など、国民のデザインに対する意識が高くなったこともある。
*Wikipedia「連邦美術計画」のページより
コミュニティ・センターには「We the People(我々人民)」の他にも、彫刻家・レノア・トーマス(Lenore Thomas)の作品がいくつかあります。これらの彫刻はアメリカ合衆国憲法の前文(Preamble)が表現されたものです。
Preamble
We the People of the United States, in Order to form a more perfect Union, establish Justice, insure domestic Tranquility, provide for the common defense, promote the general Welfare, and secure the Blessings of Liberty to ourselves and our Posterity, do ordain and establish this Constitution for the United States of America.前文
われら合衆国の人民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、われらとわれらの子孫のうえに自由のもたらす恵沢を確保する目的をもって、アメリカ合衆国のために、この憲法を制定する。
コミュニティ・センターの壁の5つの彫刻。左側から順に次のような意味が込められています。
In Order To Form A More Perfect Union(より完全な連邦を形成するために)
Establish Justice(正義の樹立)
Insure Domestic Tranquility(国内の平穏の保障)
Provide For The Common Defense(共同の防衛への備え)
Promote The General Welfare(福祉全般の増進)
グリーンベルトにあるニューディール・カフェ(New Deal Café)のロゴは、「国内の平穏の保障(Insure Domestic Tranquility)」の彫刻を模したものとなっています。
ロゴの図柄のために参照されるということにも、今でもコミュニティ・センターや彫刻家・レノア・トーマスの作品が身近なものであり、そして、大切にされていることが現れていると感じます。
(更新:2020年3月9日)