『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

上海の公園:多様なアクティビティが繰り広げられる場所

2011年9月に上海を訪問した際、いくつかの公園を訪れました。観光地の近くにある公園、旧フランス租界にある公園など、立地するエリアも時間帯も異なりますが、公園では多くの人々により、様々なアクティビティが繰り広げられているのを目の当たりにしました。上海を訪れた際、特に印象に残っている公園をご紹介したいと思います。

襄陽公園(Xiang Yang Gong Yuan)

  • Address:1008 Huaihai Middle Rd, HuaiHai Lu XiDuan, Xuhui Qu, Shanghai Shi, China, 200000
  • 最寄りの地下鉄駅:陕西南路駅

旧フランス租界にある公園で、襄陽北路と淮海中路の交差点の北東角に位置。襄陽北路と淮海中路の交差点付近から、公園の中央を斜めに横切るようにまっすぐな道が通っており、その正面には「六角亭」という六角形の屋根のある場所。「六角亭」の北側は広いオープンスペース、西側は木々が植えられたエリア、南側は子ども用の遊具が置かれたエリアとなっています。
多くの人が過ごしていましたが、特に交差点から斜めに通る道と、「六角亭」の周りに多くの人を見かけました。「六角亭」ではトランプをする人々のグループがいくつもできていました。斜めに走る道ではコーンを並べてローラースケートの練習をしている親子とそれを眺める人々も。この他、ベンチに座ったり、体操したり、立ち話をしている人も。子どもから高齢の世代の人まで多様な年代の人が過ごしているのも印象的でした。

復興公園(Fuxing Park)

  • 住所:上海市黄浦区复兴中路516号 邮政编码: 200000
  • Address:516 Fuxing Middle Rd, Huangpu Qu, Shanghai Shi, China, 200000
  • 最寄りの地下鉄駅:新天地駅、淮海中路駅、陕西南路駅

訪問した公園の中で最も多くの人が過ごしており、アクティビティの種類が最も多彩だったのが復興公園です。復興公園へは土曜日と日曜日の2回訪れましたが、特に日曜日に訪れた時には音楽、歌声、話し声、そして、人の密度の高さとお祭りのような雰囲気だったのが印象に残っています。旧フランス租界にあり、新天地駅、淮海中路駅、陕西南路駅の3つの駅を結んだ三角形の中心付近に位置しています。
『地球の歩き方 上海 杭州・蘇州・水郷古鎮 ’11~’12』では次のように紹介されています。

「1909年にフランスによって造られた、上海で最も古い公園の1つ。開園当時の名前は顧家宅公園で、1944年に大興公園と改名した後、1946年に現在の名前になった。開園当初はフランス人以外の立ち入りが禁じられたことから「法国公園」(フランス公園)の別名で呼ばれた。現在も中国で唯一、フランス風の庭園をもつ公園として知られる。」
*『地球の歩き方 上海 杭州・蘇州・水郷古鎮 ’11~’12』

復興公園は大きな公園で、次のように大きく分けて6つのエリアがあります。

□马克思、恩格斯雕像(Marx and Engels Statue)
復興公園の北東角にあるマルクス・エンゲルスの像のある広場。

□沉床园(Lowering Flower-Bed)
マルクス・エンゲルスの像のある広場の南に位置する西洋式の庭園。「沉床园」の南北両側にはすずかけ(プラタナス)の並木道があり、並木道を中心に多くの人が過ごしています。
北側の並木道では、歌、バトミントン、ダンスのグループ。ダンスのグループは、ペアになった人々が整列し、マイクを持った女性の指示に従って踊ったり、ヘッドマイクをつけた男性が踊り方の指導をしたりするなど、非常に組織立って活動しているように見えました。
「沉床园」の北西角では、聴診器を首からかけた女性がテーブルを出して座っています。女性は、高齢の男性の血圧を測定。血圧測定が終わると、別の高齢の男性がやってきて、血圧を測ってもらっていました。
南側の並木道には、大人数の人だかり。ピアノ、トランペット、ドラムなどクラシック楽器の演奏が行われており、演奏を聴く人たちの集まりでした。この他、南側の並木道にはダンスをする人や、マラカスを振る人たちのグループをみかけました。

□大草坪(Tha Lawn)
「沉床园」の南にある大きな芝生の広場で、小さな子どもを連れた人がいました。
「大草坪」の東側は地面が舗装された細長い空間で、ここでもダンスをしているグループ。西洋人のカップルが2人で踊っていたが、講師と思われる人が2人に声をかけ、それぞれ韓国の男女とペアを変えてダンスの仕方を教えている光景も見かけました。

□玫瑰园(Rose Garden)
復興公園の北西角にあるバラ園で、他のエリアに比べると過ごしている人は少ないですが、ここでも多様な活動がなされています。舗装された地面を利用して、1人の男性が書道(地面書道)をしています。筆は長く、先端の毛のところにペットボトルの水をふくませて字を書いていくというもの。それを写真に撮る人も。男性はしばらくすると別の場所に移動して、字を書いていました。この日、書道しているのを見かけたのはこの男性1人だけでした。
バラ園の周囲では、将棋やトランプをしている人、ベンチに座って話をしている人、ストレッチをしている人もいます。一画に、新聞が掲示されたコーナーも。剣舞をする女性グループがいましたが、9時頃には活動を終えたようでした。このように公園が混雑するまでの朝早い時間に行われる活動があることもわかります。

□「游乐园」(Amusement Park)、喫茶・売店の入る建物のあるエリア
「玫瑰园」の南側/沉床园の西側に位置するエリアです。建物の周りはテーブルが置かれており、木の周りにも円形のベンチがあります。日曜日に訪れた時は、このエリアが最も混雑しており、テーブルはほぼ満席。テーブルやベンチに座っている人々の隙間で、気功をする人、剣舞をする人もいます。
建物の南側では「卢湾区工人倶楽部」(*「工人」は労働者の意味)、建物の北側では「歌友会」という幕をかかげて、歌を歌うグループがありました。スピーカー、マイク、譜面立て、歌詞を掲示する道具など、色々な物が準備されており、歌詞を書いた紙を配っている人もいました。

□荷花池(Water-Lily Pond)
復興公園の一番南にあるひょうたん型の池のある広場。池にはアヒルの乗り物、子どもが中に入って走ると水面を回転する水車のような遊具があります。小さな子どもを遊ばせている親の姿を見かけました。

古城公園(Gucheng Park)

  • 住所:上海市黄浦区人民路333号 邮政编码: 200000
  • Address:333 Renmin Rd, Huangpu Qu, Shanghai Shi, China, 200000
  • 最寄りの地下鉄駅:豫園駅

有名な観光地である外灘(The Bund)南端の遊覧船乗り場から、少し南に歩いたところにある公園。観光地になっている豫園の北東に隣接しています。
公園の南東には「都の森」という日本食レストラン。レストランの下は屋根のかかった空間になっており、訪れた時、赤いズボンを履いた10人ほどの女性が踊っていました。レストランの周りは池になっていて、池の南側には高齢の男性の姿。石のテーブル・椅子や段差になっているところにいくつかのグループができており、将棋やトランプをしていました。その様子を周りから眺めている人も。段差になっているところの縁に座って話をしている人、1人で座っている人もいます。
この他、芝生の広場、木々の間の歩道、喫茶のできる売店など古城公園には色々な場所があり、歩道の手すりを利用してストレッチをしている人、散歩している人、フルートに合わせて歌を歌っている人など様々に過ごしているのを見かけました。

静安公園(Jing’an Park)

  • 住所:上海市静安区静安寺 邮政编码: 200000
  • Address:Jing’an Temple, Jing’an, Shanghai, China, 200000
  • 最寄りの地下鉄駅:静安寺駅

三国時代の247年に建てられたと伝えられる上海の名刹・龍安寺の南にある公園。訪れた時、静安寺の門の脇には行列ができていました。門の脇にある「静安寺浄素月餅」で月餅餅を買い求める人の行列でした。案内してくださった方の話では、9月11日は中節秋であり、9月10日~12日まで3連休だとのこと。
龍安寺から南京西路を渡った南側が静安公園。龍安寺に来た観光客が多いせいか、他の活動のような多様な活動が行われているわけではなく、将棋をしている人を1組見かけただけでしたが、ベンチには多くの人が座っていました。歩道で結婚式の写真撮影をしている人も。
龍安寺は高低差があります。丘の上から音楽が聞こえてきたので、階段を登って行くと、男性が弾く二胡にあわせて高齢の女性がマイクを持って歌っているのを見かけました。案内してくださった方の話では、歌の番組に出るための練習をしているということでした。


ご紹介したように、上海の公園では多くの人々により、多様なアクティビティが繰り広げられていますが、特に次のようなことが印象的でした。

  • 活動する人の属性:公園で活動している人は中高年の人が中心。ただし、日曜日の午前中に復興公園を訪れた時には、子どもを連れた人の姿も見かけるなど、多様な年齢層の人々が公園で過ごしていた。
  • 多彩な活動内容:バトミントン、剣舞、気功、ダンスといった身体を動かすものから、歌や楽器の演奏、書道、そして、おしゃべりやトランプといった身体を動かさないものまで様々。また、トランプのように自分たちが楽しむためにやっているトランプもあれば、ダンス、歌などリーダー的な人が存在する活動もある。
  • 様々な道具が用意:活動しているグループの人々は、マイク、スピーカー、幟、譜面立てなど、様々な道具が用意されている。お揃いの服装を着ているグループもある。
  • 活動に参加するのではない過ごし方:活動に参加せず、1人で椅子に座ったり、新聞を読んだり、散歩したりしている人もいる。また、周りから活動している様子を眺めている人もいる。
  • 復興公園で、オーケストラの演奏を多くの人が取り巻いて聴いていた。また、血圧測定をしている光景も見かけた。このように身近な公園という場所は、音楽ホール、病院など、(日本では)施設内で行われることが多いものと関わる場所にもなっている。

上海を案内してくださった方の話では、日本ではサークル活動や習い事の機会が多いから、公園で活動する必要がないのではないかと話されていました。けれども、サークル活動や習い事は活動を始めるための敷居が高く、何よりも、直接活動に参加しない人が活動の様子を眺めることが生まれない。誰もが自由に入れる公園で多様な活動が行われていることの意味は、活動を始めるための敷居の低さに加えて、「この地域にはどのような人々がいるのか、どのような活動が行なわれているか」ということを一望できる、認識できる機会を全ての人々に提供していることだと思う。このように考えると、上海の公園で見かけた光景は、公園という場所が持つ可能性を教えてくれているように思います。

なお、上海の公園は入園できる時間が決まっており、『地球の歩き方 上海 杭州・蘇州・水郷古鎮 ’11~’12』に掲載されているいくつかの公園の情報を見ると、入園可能時間は朝の5~6時と非常に早い時間から、夕方の18~19時までのところが多かったです。そのため、公園にはゲートが設けられています。