『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

Ibashoネパールのメンバーが大船渡を訪問しました①

ネパールのマタティルタ(Matatirtha)村で活動するIbashoネパールのメンバーらが大船渡を訪問しました。訪問したのはマタティルタ村の4人、IbashoネパールのコーディネーターであるBihani代表の方、そして、世界銀行のスタッフら。
訪問の目的は、今後のIbashoネパールの活動、2015年ネパール大地震からの復興の参考にするため。
メンバーらは2016年10月20日(木)に大船渡に到着。翌日、10月21日(金)は朝から赤崎町の大船渡漁協、末崎町の災害公営住宅「平南アパート」、そして、末崎町の大田仮設を訪問しました。


大船渡漁協では、漁協の方から大船渡漁協のこと、東日本大震災の被害と復興状況について話を伺いました。説明の後、質疑応答の時間。
漁業の復興が早かった理由は? という質問に対しては、国からの補助金、全国各地からの支援に加えて、震災後、すぐにワカメの種つけをしたという話。「震災の後、ワカメの養殖はすぐに再開できることだった。自然のものは時期を逃すわけにはいかないので、震災後すぐに種をつけ、震災から1年後にはワカメを収穫・販売した」ということでした。
震災の経験を他の地域や国にアドバイスできることは? という質問に対しては、「1人では何もできないということ、それだけです」という話。同じものを作るのでもグループで作った方がいいものが作れるし、そうすると後継者も育つという話でした。
この他、漁協の仕組み、防災の取り組みなどについて40分ほど質疑応答をしました。

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昼食を食べた後、災害公営住宅の「平南アパート」へ。末崎町では最大規模の55戸、4階建ての集合住宅で、2016年5月末から入居が始まっています。現時点で7割程度が入居されているとのこと。ここでは大船渡市役所の職員の方が対応してくださいました。
駐車場で災害公営住宅の説明を伺った後、空き住戸を見学させていただくことに。住戸内だけでなく、階段の踏板先端に取り付けられている黄色い滑り止めについても、これはよい考えだと関心されている方もいました。
この日、集会室では「平南アパート」自治会と末崎カラオケ同好会による交流サロンが開催されていました。中を見学させていただいてよいかと伺ったところ、快く見学させていただけることに。集会室では「平南アパート」の住民と、周辺に住む方、20人ほどがカラオケをしていましたが、「ネパールの歌を」ということで、Ibashoネパールのメンバーが歌を歌う場面もありました。

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最後に訪問したのが市営球場の大田仮設。最初、談話室で支援員の方から説明を伺いました。
東日本大震災の被害について、地震の揺れによる被害は小さく、津波の被害が大きかったから、津波を受けなかった家から毛布やお米などを運び、避難所で利用することができた。それが、阪神大震災とは大きな違いだという説明。
震災から2ヶ月が経過した5月から仮設住宅に入居。末崎町には大田仮設を含めて5つの仮設住宅が建設されたが、既に末崎中学校、末崎小学校の仮設住宅は閉鎖され、現在は3つの仮設住宅に26世帯が暮らしているとのこと。仮設からの高台移転先については、末崎町内に災害公営住宅が3ヵ所に72世帯、防災集団移転が10ヵ所に127世帯が建設されており、末崎町内に高台移転する人はだいたい末崎町の人だということです。
説明の後、お金がない人は仮設住宅から出た後はどうするのか、などについて質疑応答があり、その後、空き住戸を見学させていただきました。空き住戸を見学したIbashoネパールのメンバーの1人は「立派な家だ」と話されていました。
Ibashoネパールのメンバーは、談話室内に飾られていた手芸、小物にも興味を持たれたようで、村に帰ったら自分たちも作ってみるということで写真を撮っておいて欲しいと頼まれました。

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この日の訪問はIbashoネパールの方にとっても大きな意味があったと感じます。
ネパールには海がありませんが、漁協のような団体は存在するとのこと。大船渡漁協では、共同作業を行うことの意味や、生業を復興させることについての話を伺うことができました。
仮設住宅に対して「立派な家だ」と話されたように、日本では仮設の家でも、ネパールにおいては決してそのようには見えない。そのため、日本の仮設住宅や災害公営住宅は直接的にはIbashoネパールの活動には参考にならないかもしれませんが、災害公営住宅の集会室でのカラオケのようにグループ活動をすること、仮設住宅の談話室に飾られていた手芸、小物など、参考になる具体的な活動を見ることができたことはよかったと思います。

なお、災害公営住宅の集会室でカラオケをしていた方は、いつも同じメンバーでカラオケをしていても代わり映えしないから、外からお客さんが来てくれるのは良いことだと話されていました。今回の訪問が、Ibashoネパールの方々だけではなく、大船渡の方々にとって少しでも意味ある機会になっていればと考えています。