『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

日常を大切にするために:日建設計ボランティア部のメンバーとの意見交換会

2017年2月18日(土)、日建設計ボランティア部の方に「居場所ハウス」にお越しいただき、「居場所ハウス」のメンバーとの意見交換会を行いました。
日建設計ボランティア部とIbasho Japanで続けてきた6回目のワークショップとなります。

末崎町の方々とのワークショップを重ねる中で浮かび上がってきた課題は移動すること。末崎町内には店舗や病院がほとんどないという地域の状況にまつわること、坂道が多くて歩きづらい、歩道がない道が多い、街灯がなく暗いといった道路の状況にまつわること、BRTは1時間に1〜2本走っているため利用しやすいが、BRTが走っていない碁石方面は1日数本のバスしか走っていないという公共交通にまつわること。
いずれも簡単に解決できる課題ではありませんが、先日のワークショップでは、これまでのワークショップで議論してきたことを、何か1つでも具体的な活動に、「居場所ハウス」の運営の改善に結びつけるにはどうすればよいのかについて意見交換を行いました。
意見交換会では内容を限定せず様々な話をしましたが、「日常」が共通するテーマになっていたと思います。


○歩くことにまつわる意識を変えるためのマップ
車社会が浸透しているため、数十メール先のゴミ・ステーションまで車で行くというDoor to Doorのライフスタイルが浸透している。だから余計に、車が運転できなくなった途端にどこにも行けなくなるという不安が大きいが、「実際に歩いてみると、案外、遠くなかった」と気づくこともあるのではないか。坂道が多かったり、冬は寒かったりと条件はよくないとしても、「実際に歩いてみると、案外、遠くなかった」という経験を重ねていけば、車が運転できなくなっても、あそこまでなら歩けるという意識を持ってもらえる可能性はある。
非常に遠回りですが、移動することにまつわる課題に対して、まず自分たちでできることの1つ。そのために店舗、施設に加えて、きれいな景色が見える場所、季節ごとの花が咲いている場所、お気に入りの場所、歴史にまつわるものなど、歩くからこそ体験できることを掲載したマップを作るのはどうか。

○日常の場としての居場所ハウスの情報
「居場所ハウス」は木曜を除く週6日、10時から16時まで運営しており、お茶を飲んだり、食事をしたりすることができる。しかし、このような日常の場であるという情報が、まだ十分には末崎町内には伝わっていない可能性がある。
「居場所ハウス」は毎月、月間行事の予定表を末崎町内の全戸に配布しており、『東海新報』にも様々なイベントの様子を掲載していただいている。しかし、このようにして発信された情報はイベントにまつわるもの。それが結果として、「居場所ハウス」はイベントの場所として認識されている可能性はないか。Facebookでは日常の様子も発信していますが、Facebookは全員が見るわけではない。
だとすれば、日常の場としてこのような使い方ができるのだという情報を「(仮)居場所ハウス通信」のようなかたちで発信してはよいのではないか。その際に、お客さんとして過ごすだけでなく、どのような役割をもてるかという視点も大切になる。

○最新の/違う世界の情報に触れることができる場所
お茶が飲めることは大切だが、日常的に来てもらうためには、お茶が飲めるだけでは弱いかもしれない。「居場所ハウス」に来るからこそ、家にいたのでは触れることができない最新の/違う世界の情報に触れることができる場所になればいい。例えば、

  • 自分でパソコンが使えない、インターネットが使えない、ネットショッピングを1人で使うのは不安という人のために、ネットショッピングを一緒に試せるというように、「居場所ハウス」がリアルな世界とネットの世界の窓口になる。そのために、「居場所ハウス」にネットに詳しい人が何人か出入りするという状態であればよい。店舗がなく車がないと買物できないという地域においては、ネットショッピングを活用するのも結果として移動することにまつわる問題を解決することにつながる。
  • 今はネットを使えば、自分で作った物を販売できる時代。自分で作った物を売りたいという人のお手伝いをする場所という意味でも、リアルな世界とネットの世界の窓口になれるのではないか。
  • 子どもたちが将来の仕事を考えるきっかけにするために、大工、漁業、学校の先生、消防などの職業や、公民館、婦人会、民生委員など地域活動のように、「居場所ハウス」に出入りしている人が普通の暮らし(子どもたちにとっては違う世界の情報)を伝える活動を企画する。

出された意見を具体的にどう実現していくかはこれから考えていく必要がありますが、具体的な空間をもつ「居場所ハウス」だからこそできることはまだまだありそうだと感じました。少しずつでも運営にいかしていくことができればと思います。