『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

リメイキング・アワ・ハートランド(ROH)でリニューアルされたタウン・センター@シンガポールのベドック

シンガポールでは国民の約8割がHDB(Housing and Development Board:住宅開発庁)が建設する住宅に住んでいます。HDBの拠点であるHDBハブのギャラリーでは、HDBが街や団地を計画する際の新たなポイントとして、次の6つが挙げられています。

  • 緑(Greenery)
  • コミュニティ(Community)
  • 移動・輸送(Mobility & Transport)
  • スマート・サステナブル(Smart & Sustainable)
  • 統合された商業施設(Integrated Commercial Facilities)
  • ヘリテージ(Heritage)

このうち、コミュニティの事例として挙げられているのがベドック(Bedok)のタウン・センターです。

ベドックはシンガポールの東部、チャンギ空港(Changi Airport)の近くにあり、HDBの最初のプロジェクトが完成したのは1975年と、古くからHDBによる開発が進められてきました。HDBが1992〜2024年まで用いていた分類では「成熟した団地」(Mature estate)に分類。面積は21.69km2、2018年時点の人口は281,300人となっています*1)。

ベドックを含むイースト・コースト(East Coast)は、2011年、HDBの街・団地を更新するプログラムであるROH(Remaking Our Heartland/リメイキング・アワ・ハートランド)の対象地に選定。ROHによりタウン・センターなどのリニューアルが行われました*2)。

(前略)HDBよるROHプログラムは、住民が遊び、具体化し(Shape)、学び、そして環境とつながるために、ベドック・タウン・センター(Bedok Town Centre)を活気に満ちた新しいハブに変えることを約束します。ベドック・タウン・センターでは、バス・インターチェンジ(Bus Interchange)を併設するベドック・モール(Bedok Mall)とベドック・レジデンス(Bedok Residence)、新しいベドック・インターチェンジ・ホーカー・センター(Bedok Interchange Hawker Centre)、ベドック・タウン・スクエア(Bedok Town Square)とヘリテージ・コーナー(Heritage Corner)、そして、改良された歩行者空間(Pedestrian Mall)などの新たな施設を楽しむことができます。また、カンポン・チャイ・チー・コミュニティ・クラブ(Kampong Chai Chee Community Club)、ベドック・スポーツ・センター(Bedok Sports Centre)、ベドック・ポリクリニック(Bedok Polyclinic)、シニア・ケア・センター、ベドック公立図書館(Bedok Public Library)が入居するハートビート@ベドック(Heartbeat@Bedok)と名付けられた複合施設もあります。

ベドック・タウン・センター以外では、コミュニティ・スペースと近隣センター(Neighbourhood Centre)を活性化するために、HDBの近隣センターが改良されます。加えて、ベドック・タウン・センターとイースト・コースト公園(East Coast Park)、及び、ベドック・リザーバー公園(Bedok Reservoir Park)を結ぶ自転車と歩行者専用ルートのあるアウトドア・プレイ・コリドール(Outdoor Play Corridor)、そして、ベドックとイースト・コーストのエリアの主な活動ノードを結ぶ包括的な自転車道の包括的なネットワークがあります。ベドックとイースト・コーストのエリアの社会的歴史と多様な文化は、ヘリテージ・トレイルの一部として設置されたヘリテージ・プレイス・マーカー(Heritage Place-Marker)に記録されています。

以下では具体的にタウン・センターはどのようなリニューアルが行われたのかを紹介したいと思います*3)。

ベドック・モール(Bedok Mall)

ベドック・モール(Bedok Mall)はMRTのベドック駅に直結するショッピング・モールで、バス・インターチェンジ(Bus Interchange)が併設されています。ベドック・モールは2013年12月3日に完成、エアコン完備のバス・インターチェンジは2014年11月30日に完成。
上部は民間の集合住宅(コンドミニアム)となっています。

ベドック・インターチェンジ・ホーカー・センター(Bedok Interchange Hawker Centre)

ベドック・モールの東側には、ベドック・インターチェンジ・ホーカー・センター(Bedok Interchange Hawker Centre)があります*4)。完成は2014年10月。

天井の高い空間に屋台が並んでおり、お昼過ぎに訪れた時はほとんどの席が埋まっていました。14時半頃、再び通りかかった時にもほとんどの席が埋まっており、時間に関わらず多くの人が過ごす、活気のある場所になっていました。

ベドック・タウン・スクエア(Bedok Town Square)

ベドック・インターチェンジ・ホーカー・センターに隣接して、ベドック・タウン・スクエア(Bedok Town Square)があります。屋根のある大きな広場で、屋根はベドック・インターチェンジ・ホーカー・センターとつながっています。ステージのような場所があり、大きなモニターも設置されています。

訪れた時、ベドック・タウン・スクエアではいくつかのブースが出されていました。

ヘリテージ・コーナー

ベドック・タウン・スクエアのすぐ北側に、ヘリテージ・コーナー(Heritage Corner)があります。ベンチの間に葉っぱのような形をした掲示板が9枚あり、うち8枚には次のようなタイトルで地域の歴史が紹介されています。

  • ベドックとイースト・コースト(East Coast)のヘリテージ(The Heritage of Bedok and the East Coast)
  • 日本による占領(The Japanese Occupation)
  • ベドックの近代の顔:開拓と再定住(The Modern Face of Bedok: Reclamation and Resettlement)
  • ベドックの日常生活と出来事(Everyday life and Happenings in Bedok)
  • イースト・コースト(East Coast)での食事と遊び(Eating and Playing along the East Coast)
  • より大きなベドック(Larger Bedok)
  • ベドック・ニュー・タウン(Bedek New Town)
  • ベドックの今日・明日(Bedek Today and Tomorrow)

残りの1枚は、ベドック・ヘリテージ・トレイル(Bedok Heritage Trail)が紹介されています。ヘリテージ・コーナーを含む22のスポットが取り上げられており、スポットが地図とともに掲載されています。

歩行者空間(Pedestrian Mall)

ベドック・タウン・スクエア、ベドック・インターチェンジ・ホーカー・センターのあるエリアの東側は、以前からの建物が残されています。1階部分には店舗が並んでいますが、店舗と店舗の間の歩行者空間はストリート・ファーニチャーの設置や植栽などにより改良されています。

ハートビート@ベドック(Heartbeat@Bedok)

ベドック・タウン・スクエアから歩行者空間を歩いて北東に歩いていくと、植栽のされた船のような大きな建物が目に飛び込んできます。
2018年2月4日にオープンした複合施設、ハートビート@ベドック(Heartbeat@Bedok)で平面の形状は心臓(ハート)の形になっています。ハートビート@ベドックはこちらをご覧ください。


  • 1)Wikipedia「Bedok」のページより。
  • 2)以下の部分はHDB「East Coast」のページの翻訳である。
  • 3)以下はHDB「East Coast」のページに掲載されているe-Exhibition(2015年1月)のパネル、Wikipedia「Bedok」のページなどを参考にした。
  • 4)ホーカー・センター(Hawker Centre)はこちらを参照。