※ワシントンDCのその後の状況はこちらを参照。
※ワシントンDCにおける対応を時系列で整理した情報はこちらを参照。
アメリカの首都、ワシントンDCは2019年時点の人口は約70万人となっています。ここではワシントンDCにおいて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対してどのような対策がとられたのかをご紹介します。
目次
感染者数・死亡者数の推移
アメリカでの新型コロナウイルス感染症の感染者は、2020年1月21日に西海岸のワシントン州で初めて見つかりました(※Wikipediaの「アメリカ合衆国における2019年コロナウイルス感染症の流行状況」のページより)。ワシントンDCで初めての感染者が見つかったのは、それから約1ヶ月半後の2020年3月7日。
ワシントンDCの1日の感染者数は、いくつかの山が見られますが、2020年11月から2021年1月にかけてが最も多く、1日に500人近い日も見られました。その後は減少し、2021年4月末には50〜100人の間を推移するようになっています。
一方、1日の死亡者数は、出禁止令(自宅待機命令)が発令されていた期間は20人近い日もありましたが、その後は減少し、2021年4月末には数人という日が多くなっています。
検査数の推移
ワシントンDCでは検査体制も徐々に拡充され、ドライブスルー、及び、消防署を含めたウォークアップ(徒歩)の検査場がもうけられました。検査体制の拡充により、新型コロナウイルス感染症の症状がある住民、新型コロナウイルスに暴露した人は、医師の診断書が不要で、無料の検査を受けることが可能な状態となっています(※ワシントンDCにおける検査体制はこちらを参照)。
検査数は、2020年11月末には1日に1万件を超える日が出てくるなど増加しています。ワシントンDCの人口約70万人に対して、2021年4月末時点の延べ検査数は約150万件と人口の2倍になっており、日本に比べると人口あたりの検査数の多さがお分かりいただけると思います。
陽性率は外出禁止令(自宅待機命令)が発令されていた期間は大きかったものの、その後は低下。2020年11月〜2021年1月にはやや上昇していましたが、その後は小さくなっています。
ワシントンDCの対応
2020年3月7日、ワシントンDCで初めての感染者が見つかりました。感染者の行動履歴の調査が行われ、接触した可能性がある人が自宅で自己隔離することが推奨されました。
2020年3月11日にはヒト・ヒト感染を含む新たな感染者が確認されたことが発表され、「非常事態」(State of Emergency)、および、「公衆衛生上の緊急事態」(Public Health Emergency)が宣言されました。また、1,000人以上が集まる不可欠でない大規模集会・会議を延期または中止すること、1,000人に満たない場合でも社会、文化、娯楽イベントの開催を主催者側が再検討することが推奨されました。
2020年3月13日にはトランプ大統領が国家非常事態を宣言。この日、ワシントンDCでは、DC政府にテレワークを導入すること、2020年3月16日から公立図書館を閉館すること、2020年3月17日から公立学校を休校にすることなどの措置が発表されました。
2020年3月16日から50人以上の集会禁止、レストランおよび居酒屋(Taverns)でのテーブル席の停止、DCメトロの減便、2020年3月17日からクラブ、多目的施設、ジムクラブ、スパ、マッサージ、劇場の営業停止と、禁止される集会と閉鎖される施設の種類は徐々に増えていきます。
ワシントンDCのタイダル・ベイスン(Tidal Basin)周辺は桜の名所となっています。例年は多くの人で賑わいますが、今年は花見のためにDCメトロ・バスを利用しないようにするために、タイダル・ベイスン(Tidal Basin)周辺の駅が閉鎖されることとなりました。
2020年3月24日には「基幹的でないビジネス」(Non-Essential Businesses)の営業停止の措置が発表(2020年3月25日22時から発効)。「基幹的でないビジネス」にはツアーガイド、小売服店、美容院、理髪店、ジム、映画館などが含まれること、営業を継続できる「基幹的なビジネス」(Essential Businesses)であっても対面ビジネスを行なう場合はソーシャル・ディスタンシング(Social Distancing)として6フィート(約1.8メートル)以上の間隔をあけるのを遵守することが発表されています。
外出禁止令(自宅待機命令)(2020年3月)
2020年3月30日には外出禁止令(自宅待機命令:Stay-at-Home Order)が発令されました(2020年4月1日午前0時1分から発効)。主な内容は以下の通りです。
- 以下の例外を除き、全てのDC市民が自宅に滞在するよう命ずる。
□遠隔医療では提供できない医療を受けたり、食料や生活必需品を入手したりするなど、不可欠な活動(Essential Activities)に従事する場合
□不可欠な政府機能(Essential Governmental Functions)を運用または訪問する場合
□基幹的なビジネス(Essential Businesses)で働く場合
□不可欠な移動(Essential Travel)に従事する場合
□市長令で定義されている「許容されるレクリエーション活動」(Allowable Recreational Activities)に従事する場合- アパートの共通エリア(ジム、ラウンジ、ルーフトップ等)の使用を禁止
- 不可欠な移動(Essential Travel)に従事する場合に公共交通機関を利用する者は、ソーシャル・ディスタンシング(Social Distancing)を遵守
- 2020年3月24日に発出した市長令に定める通り、基幹的なビジネス(Essential Businesses)のみの運用を許可。
- 本令に故意に違反した個人または団体は、1,000ドルの罰金、営業の一時停止、または免許の取り消しを含む制裁措置や罰則を含む民事、刑事、行政上の罰則の対象となる。また、本令に故意に違反した個人は、軽犯罪の有罪として、5,000ドル未満の罰金、もしくは90日未満の禁錮、またはその両方が科される可能性がある。
※2020年3月30日配信の在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」より。ただし、表現を改めている部分がある。
外出禁止令(自宅待機命令)下においても外出が可能な「許容されるレクリエーション活動」(Allowable Recreational Activities)は次のように定められています。
「許容されるレクリエーション活動」(Allowable Recreational Activities)とは、世帯員との屋外活動(outdoor activity with household members)で、ソーシャル・ディスタンシングの要件(Social Distancing Requirements)に準拠し、活動前後に使用機器の消毒を行うものを意味する。世帯員以外との屋外活動をしてはならない。
例:ウォーキング、ハイキング、ランニング、犬の散歩、サイクリング、ローラーブレード、スクーター、スケートボード、テニス、ゴルフ、ガーデニングと、その他、参加者全員がソーシャル・ディスタンシングの要件を遵守し、人と人との接触がない活動
※「Mayor Bowser Issues Stay-At-Home Order」March 30, 2020の翻訳(一部省略)
2020年4月8日には、市長令「公衆衛生上の緊急事態期間中の食品販売業者に求められるソーシャル・ディスタンシングの手順と、ファーマーズ・マーケットとフィッシュ・マーケットの運営要件」が発令され、食料品店には買い物客がマスク着用を指示するなどの看板を掲示すること、入店する客の数を制限する等の対応が求められました。
2020年4月15日にはタクシー、ライドシェア、民間輸送業者等の利用者、ホテルの宿泊客にもマスク着用が義務化されました。
DC再開(2020年4月)
2020年4月中旬以降には感染防止の対応によって停滞している社会をどう再開するかの提案が見られるようになっています。
2020年4月16日にはトランプ大統領がアメリカ再開のためのガイドライン『オープニングアップ・アメリカアゲイン』(Guidelines for Opening Up America Again)を発表しました。
2020年4月23日にはワシントンDC市長が『DC再開』(Reopen DC)を発表。これは、3つのフェーズによって社会を段階的に再開していくという提案です。
2020年4月23日木曜日に、ボウザー市長は『DC再開』(ReOpen DC)の計画を発表しました。市長は、我々の街を再開するだけでなく、より公平なDCを築くための一世代に一度の機会だと述べました。安全で持続可能な回復のためには、測定し、データに基づき(Data-driven)、そして、慎重に行う必要があります。『DC再開』は安全で持続可能な方法でDCを再開するために、コミュニティとして協力することです。我々は、一緒に、科学に基づき、コミュニティのニーズに合わせた計画を作成します。
『DC再開』は、ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院(Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health)のレポート『Public Health Principles for a Phased Reopening During COVID-19: Guidance for Governors』に準拠し、公衆衛生上の重要な指標と能力に基づいた段階的な対応が含まれています。また、コミュニティベースのガイドライン、セクターベースのガイダンス、明確なコミュニケーションに焦点を当てた内容も含まれています。
※「ReOpen DC」のページの翻訳。
『DC再開』では、再開のプロセスが3つのフェーズで捉えられており、『DC再開』は2番目の安定化(Stabilization)のフェーズに焦点を当てるものとされています。
- (1)緊急対応(Emergency Response):現在のフェーズ。
- (2)安定化(Stabilization):『DC再開』が焦点を当てるフェーズで、制限を緩和するが、ネガティブな指標を注意深く監視し、迅速に対応する。
- (3)長期的な回復(Long-term Recovery):新しい、よりレジリエントな正常な状態(New, more resilient normal)を見つける方法。このフェーズは、ワクチンが広く入手可能になったときに開始される可能性が高い。
『DC再開』の作成にあたって重視されるのが、HOPEと呼ばれる健康(Health)、機会(Opportunity)、繁栄(Prosperity)、公平(Equity)の4つの価値です。
健康(Health):健康で安全な市を大切にしています。これは、住民の健康の確保に加えて、健康状態の改善、より応答性の高い緊急サービスの開発、健康的な環境、交通事故による死傷者の減少、犯罪の減少を優先するための機会です。
機会(Opportunity):住民が力強く生きる機会を作ることを大切にしています。復興を通して、活気のある雇用市場のサポートと、教育とトレーニングを通じた新しい雇用機会の計画により、住民が目標を達成することをサポートします。中小企業や起業家がより強く戻ってくるために、技術的および財政的にサポートします。
繁栄(Prosperity):活気のある市を大切にします。市を再スタートすることは、ビジネスと住民にとって重要であり、責任を共有することです。学校、インフラ、社会サービス、保育、世界クラスの場所と空間(World-class places and spaces)、そして、家族のための住宅への重要な投資をサポートするために、政府と企業の強力な財政回復を確実にする必要があります。
公平(Equity):最も弱い立場にある人々(Most vulnerable)のための結果の改善を大切にします。アフォーダブル・ハウジング、便利で健康的なコミュニティ、健康的な食品、地元のビジネス開発、小売店の選択肢(Retail options)、素晴らしいコミュニティ施設は、最も必要とするコミュニティに資源を集中させることで、自宅の近くで、そして、市の全ての近隣で見つかるようにするべきです。
※「ReOpen DC」のページの翻訳。
DC再開諮問グループによる提言(2020年5月)
『DC再開』のために、DC再開諮問グループ(ReOpen DC Advisory Group)が立ち上げられました。2020年5月21日、諮問グループは『DC再開:市長への提言』を公表しました。
ここでは次の4つのステージにより段階的に社会を再開することが提言。ステージ1から3までは全般的な安全対策(Universal Safeguards)を取ることが強く推奨されており、効果的なワクチンまたは治療法が実現した後、ステージ4の「ニューノーマル」(新しい日常)へと移行するとされています。
- ステージ1:ウイルス感染の減少(Declining virus transmission)
- ステージ2:地域的な感染のみ(Only localized transmission)
- ステージ3:散発的な感染(Sporadic transmission)
- ステージ4:効果的なワクチンまたは治療法(Effective vaccine or cure)
※ReOpen DC Advisory Group『ReOpen DC: Recommendations to the Mayor』(May 21, 2020)の翻訳。
全般的な安全対策は、他者との6フィートの距離を取るフィジカル・ディスタンシング、マスク着用、清掃や消毒、個人防護具(PPE)の供給、教育、検査や隔離へのアクセスなど多岐にわたる内容があげられています。
また、ステージを移行する基準として、次の4点があげられています。
- コミュニティにおける広がりのレベル(感染率など)
- 医療システムの能力(サージ(Surge:押し寄せ)のない十分な医療の能力など)
- 検査能力(全ての優先するグループを検査する能力など)
- 公衆衛生システムの能力(全ての新規症例とその濃厚接触者に対する十分な接触者追跡(contact tracing)の能力など)
※ReOpen DC Advisory Group『ReOpen DC: Recommendations to the Mayor』(May 21, 2020)の翻訳。
外出禁止令(自宅待機命令)の解除(2020年5月)
ステージを移行する基準を満たしたという判断から、2020年5月29日に外出禁止令(自宅待機命令:Stay at Home Order)が解除され、「Stay at Home Light」(軽い自宅待機)となり、再開フェーズ1に移行しました。
フェーズ1への移行により、次のようなビジネスや活動が再開可能となりました。
- 小売店:基幹的でない小売ビジネスは、カーブサイド・フロントドアのピックアップまたはデリバリーで営業可能。顧客が店内に入ることは禁止。
- 理髪店と美容院:予約限定、6フィート確保のもと営業可能。店内での待機は禁止。Waxing、 Electrolysis、 Threading、 Nail Careは引き続き禁止。
- レストラン:テイクアウト、デリバリー、グラッブアンドゴーに加え、屋外席を利用可能。顧客は屋外席で着席した上で注文。全てのテーブルは少なくとも6フィート間隔。一つのテーブルに6人まで着席可。現在、屋外席利用の許可がないレストランもあるが、レストラン・小売店・レクリエーション用に歩道を拡大する方向で調整している。
- 公園・レクリエーション:DC政府管轄の公園、ドッグパーク、ゴルフコース、テニスコート、陸上競技場は利用可能。プレイグラウンド、公共プール、レクリエーションセンター、その他屋内施設は引き続き閉鎖。バスケットボール・フットボール・サッカーは引き続き禁止。
- 市長の特別TFグループは、地区交通局と協力して、歩道・道路・路地、またはその一部を含む公共スペースを特定し、特定の日及び時間帯に車両通行を禁止して、歩行者の拡大を可能にする予定。
- 待機的手術:フェーズ1の間、医療提供者は、病院の収容能力や新型コロナウイルス感染症関連リソースに過度の負担をかけない外来またはその他の外科処置の提供または再開を継続する場合がある。
- フェーズ1の間は、政府だけでなく全ての労働者がテレワークを継続することを奨励する。
※2020年5月27日配信の在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」より。ただし、表現を改めている部分がある。
フェーズ1への移行により暮らしは変わりますが、非常事態宣言・公衆衛生上の緊急事態宣言は継続され、10人以上の集会も引き続き禁止されています。また、マスク着用、ソーシャル・ディスタンシング、手洗いが求められることに変わりありません。
2020年5月29日には、小売店やレストラン等の屋外営業のためのスペース確保のため、ストリータリー(streatery)を設定し、車道の一部レーンを閉鎖する。また特に、基幹的なビジネスに通勤し、健康維持のため運動する地区内の住民の死亡事故や重傷者をなくすための対策の一環として、2020年6月1日から地方道路の既定の制限速度を時速25マイルから20マイルとする。加えて、ウォーキング、ランニング、サイクリング中の近隣住民の安全なソーシャル・ディスタンシングをサポートするため、夏期の間、8つの区全体で少なくとも20マイルのDCスローストリートを設定し、地元交通のみに制限するとともに制限速度は時速15マイルとすることが発表されました。
このように社会を再開する動きが見られるようになりましたが、ワシントンDCでもミネアポリス市で2020年5月25日に発生した黒人男性死亡事件に対するデモが行われました。これを受け、2020年5月31日23時~6月1日6時、6月3日23時日~6月4日6時には夜間外出禁止令(curfew)が発令。新型コロナウイルス感染症による外出禁止令(自宅待機命令:Stay at Home Order)が解除された直後に、別の夜間外出禁止令(curfew)が発令されました。
再開のフェーズ1からフェーズ2へ(2020年6月)
2020年6月22日からフェーズ2に移行しました。ソーシャル・ディスタンシングの確保、マスク着用は引き続き継続することが求められますが、以下のフェーズ2への移行についてのガイダンスに記載されているように、いくつかの活動やビジネスが再開可能とされました。
□集会:50人超の集会は禁止。
□基幹的でない小売店:最大収容人数の50%を上限として、店内営業を再開可。
□パーソナル・サービス:日焼けサロン、タトゥー、ワックシング、スレッディング、電気分解療法、凍結療法、フェイシャル、ネイルサロンは、予約制のみ、各ステーションの6フィート間隔の確保、来客は店外で順番待ちすることを条件に営業を再開可。
□レストラン:最大収容人数の50%を上限として、屋内営業を再開可。客は着席したまま注文し、接客サービスは着席時のみ提供。全てのテーブルは少なくとも6フィート間隔で、1つのテーブルに6人まで着席可。客が料理を取りにいくブッフェ形式は不可。
□フィットネス、レクリエーション:ジム、ヘルスクラブ、ヨガ、ダンス、ワークアウトスタジオは、1、000平方フィートあたり5人まで。グループクラスは、人と器具との間に少なくとも10フィートの距離を確保。公共プールは、レッスンやラップスイミングなど体系的な活動のみ再開可。プレイグラウンド、コート、運動場は、再開可。低・中程度の接触があるスポーツのカジュアルプレイは許可するが、地区単位のスポーツは許可しない。
□礼拝所:バーチャルサービスの継続を奨励。屋内は100人以下または最大収容人数の50%のいずれか少ない方を上限に利用可。合唱や物の受渡し・共有を伴う活動は控えることを奨励。
□キャンプ、教育機会:キャンプは10人以下、距離の確保ほか安全対策を講じることを条件に再開可。図書館は、最大収容人数の50%を上限に再開可。カレッジ、大学は、 DC教育当局と協議の上に策定し、計画局が承認した再開計画に基づき再開可。劇場、映画館、娯楽施設は、芸術、娯楽、または文化的イベントを開催するための免除申請ができる。※2020年6月17日配信の在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」より。ただし、表現を改めている部分がある。
マスク着用義務化に関する市長令(2020年7月)
このように社会を再開する動きが進められてきましたが、2020年7月末になると新たな感染防止の対策が取られるようになっています。
2020年7月22日にはマスク着用の義務化に関する市長令が出されました(即時発効)。マスク着用義務化は以前の市長令にも含まれていましたが、明確にするためマスク着用に特化した市長令として発令されました(2020年7月27日発効)。
- □屋内でのマスク着用
・アパート等の共用エリアにおいてはマスクを着用しなければならない。
・一般人の出入りがあるオフィスビル等では、マスク着用なしのビル立入りは禁止である旨、掲示しなければならない。
・雇用者は従業員にマスクを提供しなければならない。- □屋外および移動でのマスク着用
・外出時に他者と6フィートの距離が取れない場合はマスクを着用しなければならない。
・タクシー、バス、地下鉄等の運転手および乗客はマスクを着用しなければならない。- □マスク着用義務の例外
・個人宅に居る住人や来客
・飲食中の人、(合法的に)喫煙中の人
・他者と6フィートの距離を維持して屋外で激しい運動をしている人
・スイミングプールに入っている人
・他者の入室が許可されていない閉鎖的なオフィスにいる人
・2歳以下の子供
・医療上の理由または身体的障害によりマスクを着用できない人、マスクを外すことができない人
・6フィート以内に人がいない状況でスピーチを行う人(放送向け、聴衆向け)
・口元を読み取る必要がある聴覚障害者に向け話す人
・職業上求められる機器がマスク着用の妨げになる場合であって実際にその機器を着用している人、またはマスク着用が公衆衛生に危険を及ぼす場合
・顔認証のためにマスクを外すことを法的に求められた人※2020年7月22日配信の在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」より。ただし、表現を改めている部分がある。
不可欠でない移動後の自己隔離(2020年7月)
2020年7月24日には、ワシントンDCの住民を含めて、「ハイリスク・エリア」からの「不可欠でない移動」(Non-Essential Trabel)によりワシントンDCに入る全ての人には、ワシントンDC到着後に14日間の自己隔離(self-quarantine)を求める市長令が発令されました。「ハイリスク・エリア」は一日の新規陽性者数が直近7日間平均10万人当たり10人以上の場所で、2週間ごとに更新されます。ただし、ワシントンDCに隣接するメリーランド州・バージニア州との間の移動はこの自己隔離の対象外とされます。
なお、「不可欠な政府機能」、「不可欠なビジネス」、「未成年者・高齢者・扶養家族の世話・介護のための移動」、「法執行または裁判所命令により求められる移動」、「学校への通学」は自己隔離の対象にはならない「不可欠な移動」(Essential Travel)と見なされます。
- (1)過去14日の間に「ハイリスク・エリア」へ/から不可欠でない移動をした全ての者は、ワシントンDCに戻ってから/到着してから14日間の自己隔離を行わなければならない。
- (2)不可欠でない移動後に自己隔離を行う者は次を行わなければならない。
・自宅またはホテルに滞在し、不可欠な治療または自宅またはホテルへの配達が不可能な場合における食材その他不可欠な物の調達に限って外出する。
・自己隔離を行う自宅またはホテルに介護人を除く客を招かず、立ち入りを許可しない。
・新型コロナウイルス感染症の症状がみられないか自ら観察し、発症した場合、適切な医療上のアドバイスを求め、または検査を受ける。- (3)「ハイリスク・エリア」を一時的に通過する場合は、自己隔離の対象とはならない(例:空港での乗り継ぎ、車両での通過)。
※2020年7月27日配信の在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」より。ただし、表現を改めている部分がある。
規制の強化(2020年11月)
2020年11月6日には、DCの訪問者、DCに戻る居住者に関する移動勧告を修正する新たな市長令が発令されました(2020年11月9日発効)。市長令では陽性者との濃厚接触者がDCを訪問することを制限すること、「低リスク地域」以外の州・国からのDC訪問者には到着前72時間以内の検査を求めること、「低リスク地域」以外の州・国からDCに戻る居住者に到着後の検査を求めることなどが定められています。
2020年11月23日にはフェーズ2における規制を強化する措置が発表されました。
発表された措置は、基幹的でない(Non-essential)ビジネス、小売でない(Non-retail)ビジネスについてはテレワーク継続を強く奨励すること、レストランについては酒類の販売・提供・消費は22時に終了すること、屋内収容人数を50%から25%へ縮小すること、大規模集会は、屋外集会は上限を50人から25人に縮小すること、屋内集会(2面を超える壁がある構造で行われる集会)は10人以下とすること、礼拝所屋内でのサービスは一度に例内に参加できる人数を収容人数の50%以下か、50人以下のいずれか少ない方にすること、社会的な集まりは10人以下とすることなどです。これまで緩められてきた制限を強化する措置となっています。
■基幹的でない(Non-essential)ビジネス、小売でない(Non-retail)ビジネス
- テレワーク継続を強く奨励(strongly encourage)。
■レストランの要件
- レストランやその他の認可された飲食施設は午前0時まで営業可能であるが、酒類の販売・提供・消費は22時に終了しなければならない(テイクアウト及びデリバリーを除く)。
- レストランの屋内収容人数は50%から25%へ縮小する(2020年11月14日(月)午前0時1分~)。
■大規模集会
□屋外集会
- 上限を50人から25人に縮小(過去の市長令に記載されている例外および屋外における礼拝サービスは規制対象外)。
□屋内集会
- 2面を超える壁がある構造で行われる集会で、より具体的な規則(レストラン、礼拝所等)が示されていないものは、屋内集会として10人を超えることができない。
□礼拝所屋内でのサービス
- 50%の上限を維持しつつ、一度に屋内礼拝に参加できる人数を100人から50人に縮小。いずれか少ない人数により実施が許可される。対面サービスではなく、バーチャルによるサービスが引き続き奨励される。
■社会的な集まり(social gathering)
- 屋内の社会的な集まりは10人を越えてはならない(同一世帯の人数が10人を超える場合を除く)。この制限は、個人宅、寮、ホテル、アパート、コンドミニアム、コーポラティブハウス及びそれら恒久的・一時的住居のパーティールームまたはコモンルームに適用される。
■ジム
- ジム、個人トレーナー、その他の事業者やレクリエーションセンターは、屋内においてグループで行われる全てのエクササイズ・クラスを停止しなければならない。
- ジム、個人トレーナー、その他の事業者やレクリエーションセンターは、屋外において25人以上のグループで行われる全てのエクササイズ・クラスを停止しなければならない。
※2020年11月23日配信の在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」より。ただし、表現を改めている部分がある。
2020年12月7日にはスポーツとレクリエーションに関する新たな措置が発表されました(2020年12月11日午前0時1分から)。新たな措置は高接触スポーツ(High-contact sports)、高校の課外活動としてのスポーツと競技会を禁止・停止し、中学生以下の子どもが高接触スポーツ(High-contact sports)の練習と教室に参加するための条件、体育の授業を実施するための条件を定めたものとなっています。
2020年12月16日には憲法上保障された活動やレクリエーション活動、商業上の活動における収容上限人数を修正する市長令が発令されました(2020年12月17日午前0時1分から)。これにより、レストラン内での食事は「25%」から「25%または250人(いずれか少ない方)」、図書館は「50%」から「館内各部屋において25%、建物全体で200人(いずれか少ない方)」などの修正が行われました。食料品店には、収容人数を25%または250人(いずれか少ない方)とすること、入店待ちの列は屋外に作ること、6フィートの距離を確保することという新たな基準が設けられました。
2020年12月19日には、休暇期における各種活動の一時的停止に関する市長令が発表されました(2020年12月23日22時から2021年1月15日5時まで)。これにより休暇期において次のような制限がなされることになりました。
- レストランでの屋内の飲食を停止。屋外での飲食、持ち帰り及びデリバリーは引き続き可。
- ミュージアムの閉館。職員や業者が最小限の仕事のために入館することは可。
- 図書館は利用者への屋内業務を停止し、ピックアップによる本の貸し出しとドロップオフによる返却に限定する。
- 公園・レクリエーション局は、個人的な水泳とフィットネス・ルームのセッションのみ予約を受け付ける。
- 基幹的でないビジネス(Non-Essential Businesses)に対してはテレワークを要請する。但し、最小限の事業運営に必要なスタッフを除く。
※2020年12月22日配信の在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」より。ただし、表現を改めている部分がある。
食料品店については、2020年12月17日から「25%または250人(いずれか少ない方)」という制限がもうけられましたが、休暇期に鍵ってこの制限が撤廃されることになりました。
なお、バイデン大統領の就任式に伴い、DCは厳戒態勢にあり、この一環として「休暇期における各種活動の一時的停止」が2021年1月22日17時まで延長されることになりました。
ワクチン接種(2020年12月)
2020年12月11日、アメリカのファイザーとドイツのビオンテック製が共同開発したワクチンが食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)から緊急使用の許可を得て、2020年12月14日から接種が始められました。
ワシントンDCでは、感染可能性や重症化の相対的なリスクに基づいて8つのフェーズがもうけられ、優先順位の高い人々から順番にワクチン接種が進められました(※ワシントンDCにおけるワクチン接種はこちら)を参照)。
ワクチン接種は順調に進み、何度かスケジュールの前倒しが発表。最終的に、2021年4月12日以降には16歳以上の全住民がワクチン接種の対象とされました。さらに、2021年5月1日からは、18歳以上の住民のワクチン接種は事前登録方式から、予約不要のウォークアップ方式に移行されています。
規制の緩和(2021年3月)
ワクチン接種が進んだことから、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)はワクチン接種完了者についてのガイダンス「ワクチン完全接種者に対する公衆衛生上の暫定的な推奨事項」を発表。2021年3月8日にはワクチン接種完了者同士は、マスクを着用せず室内で会うことができるとされました。2021年4月2日にはガイダンスが改訂され、ワクチン接種完了者は、移動前後の検査及び旅行後の自己隔離が不要とされました。2021年4月27日の改訂では、ワクチン接種完了者は屋外でのマスク着用が不要とされました。
こうした動きに伴い、ワシントンDCでも店舗や各種施設における収容人数などの規制を緩和する市長令が発令されています。
ワシントンDCでは2020年3月7日の最初の感染者の発見から2週間余りで「基幹的でないビジネス」の営業停止措置、3週間余りで外出禁止令(自宅待機命令)、6週間弱でマスク着用の義務化が出されています。そして、2020年4月下旬には『DC再開』が発表、2020年5月下旬には『DC再開:市長への提言』が公表。5月末に外出禁止令(自宅待機命令)が解除され、再開フェーズ1に移行、そして、2020年6月下旬にはフェーズ2に移行しています。ただし、感染の広がりを受けて2020年11月にはフェーズ2における規制を強化する措置が取られることになりました。
2020年12月からはワクチン接種が始まり、2021年4月には16歳以上の全ての人がワクチン接種対象者となりました。これに伴い、2020年3月以降には店舗や各種施設における収容人数などの規制が緩和されていきました。
このようなワシントンDCの動きは、行政からの要請を受けたり、世間の目に対応したりすることで、あくまでも「自粛」として感染防止が行われきた日本とは異なります。特に日本と比べた時に次のような特徴があると言えます。
- 「基幹的でないビジネス」の営業停止、外出禁止令(自宅待機命令)、マスク着用の義務化というように、感染防止のための厳格な対応が早期に出されていること。
- どのようなビジネスが禁止されるのか、どのような活動が禁止されるのかなどが罰則を伴う法として明確に定められていること。
- 社会を再開するための条件とロードマップが明確にされており、感染が縮小すれば制限を徐々に緩めていく、反対に、感染が拡大すれば制限を強めるというアプローチがとられていること。
- ワクチン接種が順調に進み、これに伴い規制の緩和も進められていること。
ワシントンDCでも新型コロナウイルス感染症が完全に収束したわけではなく、また、国による状況も違うためアメリカと日本のどちらの対応が良いかは単純に比較できませんが、この点については、後から振り返った検証が行われると考えています。