『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

コワーキング・スペースにおける新型コロナウイルスへの対応@サンフランシスコのCOVOの場合

近年、日本でも各地にコワーキング・スペース(Co-Working Space)が開かれています。
コワーキング・スペースはサンフランシスコで生まれたとされていますが、そのサンフランシスコのコワーキングスペースは、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染防止として閉鎖措置がとられました。

その後、社会を再開する動きとともに、コワーキング・スペースの運営も再開されているようです。ここでは、サンフランシスコのCovo San Francisco(以下、Covo)に注目し、新型コロナウイルス感染症に対してどのような対応がされているかを見たいと思います。

Covo

CovoはサンフランシスコのSoMa(South of Market)地区にあるコワーキング・スペース。
Covoは「どのように仕事をするかだけでなく、どうやってよりよく生活するかを考えた最初のコワーキング・スペース」とされており、コーヒーショップ、カフェ、バー(Tap Lounge)を含め、「仕事をする人がホーム(自宅)と呼べるような空間を作り出すことによって、コワーキングを前に進めていくこと」という理念が掲げられています*1)。また、次のようにCovoで仕事をするメンバーのまとまりがコミュニティと見なされており、それは家族の単位を拡大したものと捉えられています。

「Covoのコミュニティは家族の単位を拡大したもの。選ばれた家族に囲まれた世界のノマド、個人、そして、目的を達成し、全ての瞬間を楽しむチームのための安息地(Heaven)です。」*2)

Covoの料金プランは次の4種類。月ごとの契約だけでなく、必要な時に時間単位でも(ドロップインとしても)利用できるという特徴があります*3)。

  • 時間単位のコワーキング(Hourly Coworking):4ドル/1時間
  • オープン席(Open Seating):440ドル/1ヶ月
  • 専用デスク(Dedicated Desk):560ドル/1ヶ月
  • プライベートオフィス(Private Office):840ドル/1ヶ月

※写真は2018~2019年に撮影したもの。


  • 1)Covoのウェブサイトの「Covo Sf」のページより。
  • 2)Covoのウェブサイトの「Team & Mission」のページより。
  • 3)Covoのウェブサイトの「Covo Sf」のページより。料金は2020年7月2日時点の金額。

Covoにおける新型コロナウイルスへの対応

2020年6月12日、Covoは『Covoへのリ・エントリー:健康、安全、ウェルビーイング』(Re-Entry at Covo: Health, Safety, and Well-Being)(以下、『Covoへのリ・エントリー』と表記)を公開しています。
これは、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)、ワークスペースのリーダー、Covoのメンバー、コワーキング・スペースの提言に基づきまとめられた新型コロナウイルス感染症への対応の仕方で、次の5つの領域から構成されています。

  • 1.コミュニケーション(Communication)
  • 2.検査&アクセス(Screening & Access)
  • 3.距離をとること/ディスタンシング(Distancing)
  • 4.衛生管理(Sanitation)
  • 5.正常な心の力(Sanity)

『Covoへのリ・エントリー』からは次の3点に気づかされます。

1点目はコミュニティへの配慮。『Covoへのリ・エントリー』では、新型コロナウイルス感染症への対応としてあげられることの多い、「検査&アクセス」、「距離をとること/ディスタンシング」、「衛生管理」だけでなく、「コミュニケーション」と「正常な心の力」(Sanity)についても言及されていること。ここには、Covoがコミュニティを重視する場所であることが現れています。
例えば、「コミュニケーション」の1つとしてあげられている「フィードバック」の項目には次のように書かれています。

「□フィードバック(Feedback)
双方向のコミュニケーションが継続することを保証したいと考えています。どのような考え、心配、アイディアでもCovoスタッフにお気軽にお知らせください。あなたの意見を聞き、あなたからの提案を慎重に検討します。コミュニティからのインプットは常に重要であり、高く評価されてきましたが、私たちが新たな航路を切り開くためにも不可欠です。」
※『Re-Entry at Covo: Health, Safety, and Well-Being』(June 12, 2020)の翻訳。

また、「正常な心の力」(Sanity)としてあげられている「ハグ&ハッピアワー」、「イベント&ブレイク」の項目には次のように書かれています。

「□ハグ&ハッピアワー(Hugs & Happy Hours)
Covoはハグとハッピーアワーで成長してきました。ソーシャル・ディスタンシングを遵守するためTAPラウンジを再調査し、私たちの伝統である金曜日の16時30分から距離をおいたハッピーアワーを開催します。明らかな理由から、現時点では通例のかたちでは行うことができません。その代わりに、私たちはバーチャルなハグを送りますので、お互いに共有することを推奨します。Slackを利用して、励ましのメッセージ、かわいいミーム、バーチャル・ハグ、GIFの画像、ステッカーを送ってください。」

「□イベント&ブレイク(Events & Breaks)
あなたの知恵を互いにつながり、共有する機会を楽しみ続けて欲しいと考えています。バーチャル、または、距離を置いたチャットやワークショップを開いたり、テーマを提案したりしたい場合は、私たちに連絡してください。アイディアには次があります。(a)このニューノーマル(新しい日常)において経験した困難について話す、(b)このニューノーマル(新しい日常)について愛していることや感謝していることを話す、(c)新型コロナウイルス感染症以外のことについて話す、(d)コアバリュー(中核的価値観)とそれを学んだ方法、(e)セルフケアのアドバイス、(f)感情、(g)関心があることを教える、(h)一緒に猫のビデオを観る、(i)トピックを指定しない。」
※『Re-Entry at Covo: Health, Safety, and Well-Being』(June 12, 2020)の翻訳。

2点目は不特定多数の出入りを制限したコミュニティ。上で見たようにCovoではコミュニティが大切にされていますが、感染防止のため、現時点では不特定多数の出入りが制限されています。
具体的には、時間単位(ドロップイン)での利用は不可とされており、月間契約しているメンバーのみの利用がされています。ただし、月間契約しているメンバーのゲストが入ることは可能であり、また、新たに月間契約することも可能とされています。

つまり、感染防止のため、現時点でのCovoのコミュニティとは月間契約を基本とし、「検査&アクセス」、「距離をとること/ディスタンシング」、「衛生管理」の要件を遵守できるメンバーから構成されるものだと捉えることができます。

3点目は、家族として扱われる「ポッド」という単位。新型コロナウイルス感染症への対応として、同じ世帯ではない相手とはソーシャル・ディスタンシング(フィジカル・ディスタンシング)として6フィートの距離をとることが求められています。これはCovoでも同様。
ただし、Covoではメンバー、メンバーのゲスト、チームやオフィスで一緒に仕事をしているメンバーが「ポッド」というまとまりを作ることで、「ポッド」内ではソーシャル・ディスタンシングの要件が緩和されるという仕組みがとられています。

「□世帯の「ポッド」(Household “pods”)
メンバー、メンバーのゲスト、または、チームやオフィスで一緒に仕事をしているメンバーは、入る時に自分たちを「ポッド」にする選択肢が与えられます。ポッド内の人は、世帯を共有していると見なされ、ソーシャル・ディスタンシングの要件を解除する指示を受け取ることができます。」
※『Re-Entry at Covo: Health, Safety, and Well-Being』(June 12, 2020)の翻訳。

繰り返し述べているように、Covoではメンバーのまとまりがコミュニティ捉えられていますが、さらにその中に「ポッド」という世帯のように扱われる関係を築くという仕組みがとられている。少し前、アフターコロナにおける小さな相互扶助的な共同体ということを書いたことがありますが、Covoにおける「ポッド」はこれを生み出そうとする動きとして興味深いと思います。

2Covoへのリ・エントリー:健康、安全、ウェルビーイング

※以下は『Re-Entry at Covo: Health, Safety, and Well-Being』(June 12, 2020)の一部の翻訳である。

コミュニケーション(Communication)

メンバーシップの規約の補遺(Membership commitment agreement addendum)

メンバーは、隔離後(post-quarantine)の健康、安全、ウェルビーイングに関する期待を含む、メンバーシップの規約の補遺に署名することが求められます。(略)

報告(Reporting)

メンバーシップの規約の補遺の一部として、Covoに入る前に、毎日、症状のセルフスクリーンを行うことが求められます。これには、検査結果と新型コロナウイルス感染症への暴露の可能性をスタッフに報告することが含まれます。

掲示と床のマーカー(Signage and floor markers)

スペース全体で、Covoは現在、ソーシャル・ディスタンシング、方向を示す床のマーカー(directional floor markers)と同様に、各エリアの最大収容人数、衛生のステーションと取扱を示す掲示をしています。方向を示す床のマーク(directional floor markers)はスペース全体で一方通行、距離を置いた移動を促します。

フィードバック(Feedback)

双方向のコミュニケーションが継続することを保証したいと考えています。どのような考え、心配、アイディアでもCovoスタッフにお気軽にお知らせください。あなたの意見を聞き、あなたからの提案を慎重に検討します。コミュニティからのインプットは常に重要であり、高く評価されてきましたが、私たちが新たな航路を切り開くためにも不可欠です。

検査&アクセス(Screening & Access)

アクセス(Access)

追加の通知があるまで、コワーキングのラウンジへのアクセスは、Covoのメンバーとそのゲストのみに制限されます。両者ともに、以下に記載する検査要件の対象となります。現時点では、ドロップインのコワーキングは許可されていません。カフェとタップ・ラウンジはテイクアウトのみとなります。公共交通機関の利用を避けたい人のために、Covoは自転車ルームに追加の自転車ラックを設置しています。

自宅でのセルフスクリーン(Self-screen at home)

毎日スペースに入る前に自覚症状を入力し、COVOと共有できる症状追跡システム(symptom tracker​ )を開発しました。自覚症状の入力は、入口(揺動アーム、swing arm)を越えてコワーキング・ラウンジに入るために必要となります。これにより検査、症状、暴露の追跡が可能になり、あなたとCovoコミュニティの全ての人々に最高レベルの安全性を確保することができます。

非接触の体温測定(Touchless temperature screening)

コワーキング・ラウンジに入ると、各メンバーは非接触型の体温計により額の体温を測定されます。体温測定は手袋をし、マスクを着けたスタッフが行います。体温が38℃(華氏100.4度)を超える人は、平熱に戻るまでラウンジに入ることができません。(略)。体温測定によってアクセスまでに待ち時間が生じる可能性がありますが、6フィートの距離をとって待つことをお願いします。

距離をとること/ディスタンシング(Distancing)

人通りの多いエリア(High traffic areas)

人々が集まったり、並んで待ったりする可能性のあるエリア(フロントデスク、カフェ、トイレなど)には、床に6フィートのマーキングをしており、そこに立って待つことが求められます。

低密度化(De-densification)

Covoは3フロア全てから椅子を取り除き、メンバーが最低6フィートの距離を確保できるようにします。

会議室・電話ブース(Conference rooms and phone booths)

利用をモニターし、利用ごとに適切な消毒を行うため、全ての会議室と電話ブースを施錠しています。会議室は事前予約しなければなりませんが、電話ブースは要望に応じて開錠することができます。ソーシャル・ディスタンシングの要件を満たすため、各会議室からは椅子を取り除きます。

トイレ(Restrooms)

全てのトイレは1人用になりました。入る前にノックしてください。待たなければならない場合は、他の待っている人と6フィートの距離を確保してください。

世帯の「ポッド」(Household “pods”)

メンバー、メンバーのゲスト、または、チームやオフィスで一緒に仕事をしているメンバーは、入る時に自分たちを「ポッド」にする選択肢が与えられます。ポッド内の人は、世帯を共有していると見なされ、ソーシャル・ディスタンシングの要件を解除する指示を受け取ることができます。

衛生管理(Sanitation and Hygiene)

定期的な衛生管理(Scheduled sanitation)

Covoのスタッフは、よく利用されるエリアと部屋(下に記載)を、EPA(アメリカ合衆国環境保護庁)にリストされた消毒剤を利用して、毎日、定期的に消毒します。各エリアと部屋は、清掃サービスによって、徹底的に、一晩中消毒されます。
・フロントデスク
・ドアノブ
・トイレ
・手すりと柵
・会議室
・共有のワークスペース
・プリンターステーション、および、他の共有されるユーティリティ

手洗い&個人の衛生管理(Hand-washing & Personal Hygiene)

全てのメンバーとスタッフは、一度に20秒以上、頻繁に、入念に手洗いすることが求められています。手洗いの直後でない限り、顔(特に目、口、鼻、耳の内側)を触らないようにしてください。
最近の証拠によると、咳により19フィート、くしゃみにより26フィートの飛沫が飛ぶ可能性があることが示されています。これらの飛沫の飛散を防ぐためには、全員が全ての咳とくしゃみをカバーすることが不可欠です。咳やくしゃみは、手で覆うのではなく、使い捨てティッシュ、または少なくとも肘で覆ってください。咳やくしゃみをした後は、必ず手を洗うか消毒してください。

個人防護具(PPE)

カフェ、階段、通路、メンバー用のキッチンをはじめ、移動中は人通りの多いエリアではではフェイスカバーを着用しなければなりません。静止し、距離をとる時は、可能であれば顔を覆うことを推奨します。プライベートオフィスのメンバーは、オフィス内では、フェイスカバーの手順を自らで決めることができます。(略)。全員が自らの個人防護具(PPE)を用意することが求められますが、Covoでは持参し忘れた人のために、フロントデスクでマスクと手袋を用意しています。

タッチレス(Touchlessness)

Covoは、スペース全体で、共有されるタッチ・ポイントの数を減らすための措置を講じています。以下のエリアは、元々タッチレスであったか、更新により(*)タッチレスになっています。
・リサイクル、コンポスト、ゴミ箱
・ペーパータオルのディスペンサー
・石鹸のディスペンサー
・よく利用されるドア*
・カフェとバーの売り場(point-of-sale)*
・フロントデスクのチェックイン*

衛生管理ステーション(Sanitation stations)

Covoには、各フロアに1ヶ所ずつ、3ヶ所の新しいタッチレスのハンドサニタイザー(手指消毒剤)のステーションがあります。スペース全体で、ハンドサニタイザー(手指消毒剤)、消毒用ウェットティッシュ、イソプロピルアルコールのスプレーボトルなど、追加の衛生キットを利用できます。会議室、電話ブース、メンバ用のキッチンには、専用の衛生キットを置いています。

ワークスペース(Workspaces)

ワークステーションに到着したら、備え付けの消毒液で拭くことを推奨します。座席を空ける時は、必ずワークステーションを拭いてください(ジムで機器を使い終えた時とは異なります)。

空気浄化(Air purification)

(略)。各フロアには、独立したフィルター付きの冷暖房空調設備(HVAC)があるため、フロア間で空気の流れが循環することはありません。さらに、追加の空気濾過のため各フロアに専用のHEPAフィルター(high efficiency particulate air filters:高効率粒子空気フィルター)を設置しました。空気は、開店前に入れ替え(開放し)、営業時間中は循環させ、閉店後に再び入れ替える(開放する)ことで、最大の空気の品質を維持しています。

正常な心の力(Sanity)

ハグ&ハッピアワー(Hugs & Happy Hours)

Covoはハグとハッピーアワーで成長してきました。ソーシャル・ディスタンシングを遵守するためTAPラウンジを再調査し、私たちの伝統である金曜日の16時30分から距離をおいたハッピーアワーを開催します。明らかな理由から、現時点では通例のかたちでは行うことができません。その代わりに、私たちはバーチャルなハグを送りますので、お互いに共有することを推奨します。Slackを利用して、励ましのメッセージ、かわいいミーム、バーチャル・ハグ、GIFの画像、ステッカーを送ってください。

イベント&ブレイク(Events & Breaks)

あなたの知恵を互いにつながり、共有する機会を楽しみ続けて欲しいと考えています。バーチャル、または、距離を置いたチャットやワークショップを開いたり、テーマを提案したりしたい場合は、私たちに連絡してください。アイディアには次があります。(a)このニューノーマル(新しい日常)において経験した困難について話す、(b)このニューノーマル(新しい日常)について愛していることや感謝していることを話す、(c)新型コロナウイルス感染症以外のことについて話す、(d)コアバリュー(中核的価値観)とそれを学んだ方法、(e)セルフケアのアドバイス、(f)感情、(g)関心があることを教える、(h)一緒に猫のビデオを観る、(i)トピックを指定しない。

コーヒー・ストップ(Coffee Stops)

Covoのカフェでは、メンバーにお代わり自由のドリップ・コーヒー(Bottomless drip coffee)が無料で提供されます。今すぐ自分でコーヒーを淹れる必要はありません! 自分のマグカップ、または、Covoの使い捨てのカップが利用できます。マグカップはトレー(bus bin)に入れるか、キッチンに新しく設置したメンバー用の食器洗い機に直接入れてください。

(翻訳ここまで)